「奄美大島に移住」57歳の彼が進める"趣味の終活" ウミウシに魅了されて引っ越し、"終活"の背景

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今本さんはいま、定年後の生活を見据えて趣味の「終活」を始めている。今本さんの両親は60代でピンピンコロリで他界した。自分もそれほど長生きしないかもしれないと考える今本さんは雇用延長せず、60歳で定年退職して、65歳までは集中して海に潜ろうと考えている。

「自然を相手にした趣味では、すぐに動けることが何より重要です。働いていたらそれは無理ですが、退職すれば自分の好きなタイミングで撮影に行けます。貴重な健康寿命は仕事でなく、ウミウシ撮影に使いたいと思っています」

終活の一環として、将来、ホームページを閉鎖する準備も始めている。

「ホームページをそのままにして亡くなる人もいますが、自分はどこかのタイミングで閉じようと思っています。ただ、これまで撮った写真を後世に残したい気持ちもある。ウミウシ画像も含んだ静的なHTMLファイルにしておけばデータを他人に引き継ぎやすくなりますから、レンタルサーバーに置いていたウミウシのデータベースを自分のパソコンに移動させ、HTMLファイルとして出力するシステムを構築中です」

まだ出会っていないウミウシもいる

今年の春、今本さんは人生で9台目となるバイク、ホンダのスーパーカブ110PROを購入した。購入は定年後を予定していたが、『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』(ビル・パーキンス著・ダイヤモンド社)を読んで、購入を早めたという。

「死ぬときにお金がちょうどゼロになるような生き方を勧める本なんです。海が近い奄美に来たおかげで、趣味にもそれほどお金がかからなくなりました。ウミウシ撮影で徳之島に渡るときのフェリー代も、車なら往復2万5000円ほどですが、バイクなら1万円ほどで済みます。これまで節約を重ねてきたのだから、バイクももう我慢しないぞ、と。さっそく『ウミウシ撮影ツーリング仕様』に改造して撮影に出かけています」

今本さんのバイクは、撮影に必要なものを積めるようにボックスやカゴを後付けしている。ボックス下の左右両側には、カメラに付着した海水を洗い流すための水を入れた2リットル入りペットボトル8本を積むためのカゴも取り付けた。

「撮影時以外はスマートな状態にしておきたいので、ペットボトル用のカゴは折りたたみ式にしました。エンジンの回転数を知るためのタコメーターとドライブレコーダーとナビ、USB充電端子も取り付けています。これで知らない場所へのロングツーリングにも安心して出かけられます」

今本さんがこれまで撮影したウミウシは約600種にのぼり、そのうち奄美で撮影したのは430種。日本には1400種以上のウミウシがいるとされており、そのうち800種以上は沖縄で確認されている。

「鹿児島と沖縄の中間にある奄美群島の海には沖縄に近い種数が生息しているのではないか。それらのウミウシをできるだけたくさん撮りたい」と今本さんは考えている。

「一生かけても撮りきれないような数ですが、すぐそこの海にまだ出会ったことのないウミウシがいるのは確かです。だから、撮り続けます。ただ、必死になりすぎるとつまらなくなるから、緩く、長く続けていきたいですね」

【そのほかの写真も見る】色鮮やかで思わず見入ってしまう…「海の宝石」と呼ばれるウミウシ。透き通った青い海の「奄美の絶景ビーチ」も
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ウミウシ 今本淳 奄美大島
ウデフリツノザヤウミウシ。体長15mm(写真:今本さん提供)
横山 瑠美 ライター・ブックライター

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よこやま るみ / Rumi Yokoyama

鹿児島県在住。印刷会社を経て、2017年にブックライターとして独立。ウェブメディアや雑誌ではビジネス、事業承継、地域、医療・健康、SDGsなどのテーマで執筆。

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