今本さんは神奈川県小田原市生まれ。子どものころからプラモデル、工作、鉄道写真のコレクション、カメラなどの趣味に没頭してきた。
中学生になるとパソコンが気になって電器屋に入り浸り、お年玉を使ってパソコンを購入。パソコン雑誌に付いていたゲームプログラムのソースコードを打ち込んで遊んでいた。「このころから、仕事をするならコンピューター関係がいいなと思っていました」と今本さんは振り返る。
その後はバイク、自動車に熱中。かつて思い描いた通り、ソフトウェア会社のSEとしてコンピューターに関わる仕事にも就いた。
しかし、1990年代初頭にバブルが弾け、勤めていた会社が倒産した。しばらく遊んで暮らそうと思っていたところ、職場の先輩に誘われ、スクーバダイビングを始めた。
「当時は超円高で、国内で潜るより海外で潜ったほうが安かったので、サイパンへ潜りにいっていましたね。現地でライセンスを取り、水中の風景やハゼの撮影を始めました」
ウミウシの魅力に気づいたのは2000年ごろ。オールカラーで300種のウミウシが掲載された『ウミウシガイドブック』(小野篤司 著・TBSブリタニカ)を手に取ったのがきっかけだった。
「それまでウミウシは5種類しか知らなかったので、こんなにいるのかと。種類の多さとフォトジェニックなところに魅了されて、ウミウシ専門になりました」
仕事が忙しく趣味に没頭できない日々
長年、数々の趣味を楽しんできた今本さんは、ウミウシ撮影を「趣味の集大成」と表現する。
カメラやパソコンの知識は、「海の宝石」の魅力を最大限に引き出すのに役立った。カメラをウミウシ撮影用にアレンジする際、工作などで鍛えた創意工夫と手先の器用さが発揮された。「ムダのない趣味をしてきたなと自分でも思います」と今本さんは笑う。
撮影スポットは、普段は伊豆半島。夏は沖縄の海だった。しかし、SEの仕事がかなり忙しく、伊豆にもそう頻繁には行けなかったという。
「伊豆にダイビングに行くだけでもガソリン代やタンクレンタル代、施設使用料などでお金がかかりますし、帰りは国道135号の大渋滞に巻き込まれて疲れてしまう。日曜日に行くと翌日仕事になりませんから、土曜日しか行けなかったですね」
奄美大島を初めて訪れたのは2003年3月。夫婦で沖縄へのウミウシ撮影旅行を計画していたが、仕事が忙しくて手配が遅れた。代わりに向かったのが奄美大島だった。
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