「おもろいのはわかってんねんけど、自分たちの漫才があるから、ジャルジャルの審査が一番難しい。石田やったらどうする?」と、直接聞かれたこともありました。
一方で、僕はジャルジャルからもいろいろと相談を受けていました。
彼らは彼らで、面白いネタは作れるんやけど、やっぱり「漫才じゃない」と言われ続けていることを気にしていました。「どうしたらもっと漫才っぽくなるんかな」と試行錯誤していたんです。
ジャルジャルが見せた安堵と感激の涙
そういう経緯があるなか、迎えたのが2018年のM-1でした。
1本目のネタは「国名分けっこ」。オリジナルの変なゲームを持ち込んだ福徳(秀介)くんに、後藤(淳平)くんが「わけわからへん」っていうリアクションをとりながら、最後までしっかり振り回されていました。
文句なしに面白かった。「漫才じゃない」と言われ続けたジャルジャルですが、このネタを見て、僕はこれはめちゃくちゃ漫才やなと思いました。
しかも、ただシステマティックに変なゲームを見せるだけではなく、ネタの本筋とは違うところで後藤くんのかわいげを見せる。そういうナマの人間臭さを垣間見せることで「設定外の笑い」をとれていたのもよかったと思います。
時代の変化も味方したのかもしれません。
もともと漫才師だけの大会だったM-1が、第2期の2015年以降、その枠外からコント師も参入する「何でもあり」の大会に変化し、2018年は、それが見る側にも受容されてきたくらいのときでした。
だからジャルジャルも、決勝でいい戦い方ができたんちゃうかなと思います。そして何より、ネタの入り方から終わり方まで、彼らなりの漫才に対するリスペクトが感じられました。
あくまでもジャルジャルらしいスタイルは貫きつつ、しっかりと「面白い漫才」に仕上げた。そこを礼二さんも感じ取って、あっぱれと思ったからこそ高得点をつけたんやと思います。他の審査員の方々も軒並み高得点でした。
あのとき、福徳くんの目にはうっすら涙が浮かんでいたんです。
それが僕には「やっと漫才として認めてもらえた」という安堵と感激の涙に見えて、思わず、もらい泣きしそうになりました。残念ながら優勝はできなかったけど、彼らにとっては記念すべき大会になったと思います。
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