【産業天気図・ガラス/セメント】新生板硝子が本格始動。国内ガラス市場は低迷続く

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ガラス各社の今06年度収益は、国内市場低迷をベースにしつつも個別の事情を反映した、まだら模様となる。ただ各社とも不安要因を抱え、業界全体としては「曇り」が続いていると見てよい。
 建築用・自動車用の板ガラスは海外が好調でも、国内は原燃料高転嫁の値上げができなかったり自動車メーカー不振で伸び悩んだり、と業績の足を引っ張る要因が多い。これを旭硝子<5201.東証>(12月決算)は高シェアのフラットパネル用ガラスで補い、営業増益に持ち込む。日本板硝子<5202.東証>は国内・アジア主力の単体では経常利益ゼロ予想だが、買収した英国ピルキントン社の連結追加で単体不振が吹き飛び、前期比で連結売り上げは2.5倍、営業利益は4倍に急膨張する。3位のセントラル硝子<4044.東証>は国内の建築用不振に加え、主力取引先である日産自動車<7201.東証>不振の余波で、自動車ガラスも低調を余儀なくされる。数量が出ても値上げができず、利益が出ない。国内の板ガラス事業を補える事業の有無が明暗を分ける訳だ。
 もっとも旭硝子も夏に発生した液晶ガラス窯の設備不良が長引き、増益幅は縮小。日本板硝子も好調な欧州を主戦場にするピルキントンに救われる格好。両社とも明るい材料ばかりとは言い切れない状況だ。
 続く07年度は、旭硝子が台湾、韓国、国内と相次ぐフラットパネル用ガラス設備の稼働で増益を堅持。一時停止した液晶ガラス窯も06年末までに再稼働する見通し。日本板硝子はピルキントンとフル連結(前07年3月期は第2四半期から)になり、買収による相乗効果も徐々に顕在化する。ただ国内板ガラス市場の低調は続きそうで、フラットパネル用ガラスと海外事業が補う構図は変わらない。セントラル硝子も自動車ガラスと韓国フラットパネル用ガラスで提携する仏サンゴバン社との提携範囲拡大を検討しており、海外へ活路を求める動きが一段と強まりそうだ。
 一方、セメント業界は、海外好調はガラスと同様だが、国内も価格改定がある程度浸透しており、ガラスよりはわずかに日が差している状況だ。首位の太平洋セメント<5233.東証>は、値上げと物流合理化やリサイクル原燃料使用などのコスト削減で国内を支え、住宅や関連インフラ整備需要で活況の米国販売が牽引。国内主体の住友大阪セメント<5232.東証>も同様のコスト削減や赤字事業へのテコ入れで最高益に達する見込み。とはいえ米国も現状以上の伸びは期待薄。国内も公共工事の減少という基調は変わらないため、07年度は06年度より環境は厳しくなると見られる。
【鶴見昌憲記者】


(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部

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