家政婦訴訟で浮き彫り「労基法なき職場」の過酷 総裁選でも議論浮上「働き方改革」否定の禍根

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第2次安倍晋三政権肝煎りで、2019年に施行された働き方改革関連法は、罰則付きの残業時間の上限規制を柱としている。それまでは残業時間の限度を、法律ではなく厚生労働大臣の告示で定めており、原則こそ月45時間かつ年360時間とされていたが、罰則などによる強制力がないうえ、労使が合意し「特別条項」を設けることで、青天井で残業させることが可能となっていた。

それを仮に労使合意があっても上限を年720時間(月平均60時間)に規制するなどの歯止めが、罰則付きの法律として定められた。当初、長時間労働の実態があまりにひどく、この上限規制の適用が5年間猶予されてきた、ドライバー、建設業、医師の3業種にも紆余曲折がありながらも今年4月から適用されるようになった。

ようやく健全化に踏み出したはずだが

ドライバーと医師の残業上限は年960時間、一部の医師に至っては最大で年1860時間まで残業が認められるなどまだまだ残る課題は少なくないが、ようやく健全化に向けた一歩を踏み出した矢先といえる。

当時の安倍政権が労働時間規制の強化へと舵を切ったのは、「長時間労働の改善が一向に進まず、子育てや介護など家庭生活と仕事との両立が困難になっている」「うつ病などによる労災の請求件数が増加するなどメンタルヘルスの問題は深刻化している」といった時代背景があった。そしてターニングポイントとなったのは、当時大きく社会問題化された過労自殺した広告最大手・電通の新入社員の労災認定だ。

その後、コロナ禍を経てリモートワークが定着するなど、業種によっては働き方の多様化が進んできたのは確かだが、ようやく緒に就いたばかりの労働時間の規制強化の方向性を180度転換するような小泉、河野両氏の唐突にも思える発言の背景には何があったのか。

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