小泉進次郎氏が主張「解雇解禁」議論の空回り懸念 河野氏も主張し自民党総裁選で争点として浮上

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自民党総裁選(9月12日告示、同27日開票)でにわかに争点として浮上した解雇規制の緩和。論点が多岐にわたり、過去にも波紋を呼んできただけに、主張の腑分けが不可欠だ。

矢印を押し返して上向きにするビジネスパーソンのイラスト
自民党総裁選の出馬会見で解雇規制の緩和を強く主張した小泉進次郎元環境相(写真:尾形文繁)
※本記事は2024年9月12日6:00まで無料で全文をご覧いただけます。それ以降は有料会員限定となります。

「賃上げ、人手不足、正規非正規格差を同時に解決するため、労働市場改革の本丸、解雇規制を見直します」

9月6日、自民党総裁選挙に立候補することを表明した、自民党の小泉進次郎元環境相は「1年以内に実現する」と明言した「聖域なき規制改革」の筆頭格に、解雇規制の緩和を挙げた。

リスキリング支援や、ジョブ型人事の導入、労働移動の円滑化など、岸田文雄政権下での労働市場改革の取り組みに一定の評価を示しつつも、「現在の改革は、本丸部分が抜け落ちています。それが、解雇規制の見直しです」と再度、畳みかけるように強調した。

その前日、9月5日に行われた河野太郎デジタル相の政策発表の記者会見でも強調されたのが、解雇規制の緩和だった。

これまで雇用労働政策への言及は決して多くなかった有力候補の2人が、まるで示し合わせたかのように相次いで強調したことで、にわかに総裁選の争点として浮上した解雇規制の緩和。だがこの両者でもすでに、解雇規制という言葉の意図するものが異なるなど、このままでは今後の論戦で議論が深まるどころか、空回りに陥る懸念が大きい。

まずは小泉、河野両氏の発言をベースに、解雇規制をめぐる論点をしっかりと腑分けして、中身を検討してみたい。

河野氏は「解雇の金銭解決」を主張

河野氏は会見で 「解雇されても補償されていない人が、今もそれなりの数いる。補償のルールを決めておく必要がある」「一方的に解雇された時に金銭補償するルールがあれば、次の仕事(探し)に余裕を持てる」と発言した。同氏が訴える解雇規制の緩和とは、「解雇の金銭解決制度」の導入のことだとうかがえる。

解雇の金銭解決とは裁判で不当解雇と判断された場合に、職場復帰ではなく金銭の支払いで紛争を解決する仕組みだ。今から9年前の2015年、当時の第2次安倍晋三政権下で政府の規制改革会議が導入を提言し、成長戦略「日本再興戦略」に検討事項として盛り込まれた。

その後、厚生労働省の検討会が長きにわたって議論を続け、直近では2022年に報告書をまとめたが、労使双方から反発の声が上がり、事実上の先送りが続いている。

労働者側に「解雇の選択肢を増やすことにつながる」「企業のリストラの手段として悪用されかねない」と反対論が強いことに加え、実は経営者側も一枚岩ではない。検討会では解決金の上下限設定についても論じられたが、実際に具体的な水準を設定されてしまうと、その水準は現状より高くなりかねないといった懸念が中小企業を中心に根強いためだ。

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