小泉進次郎氏が主張「解雇解禁」議論の空回り懸念 河野氏も主張し自民党総裁選で争点として浮上

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実はこの解雇の金銭解決制度は2000年代に入ってから、第2次安倍政権前にもすでに2度議論されている。どちらも解決金の水準設定が問題となり導入は見送られている。

そしてこの間、解雇の金銭解決の実務としては労働局のあっせんや労働審判がより簡便な仕組みとして定着している。議論が続けられてきたこの10年近くの間にすでに実務は大幅に先に進んでおり、労使とも必要ないと思っているであろう解雇の金銭解決制度。河野氏がそれでもこれを「躍動感のある労働市場を創り出す」ための処方箋だとするなら、労使関係の実情をしっかり踏まえた丁寧な説明が求められるだろう。

小泉氏の発言は多数の論点が混在

一方の小泉氏は目下、総裁選の最有力候補と目されるが、「日本経済のダイナミズムを取り戻すために不可欠な労働市場改革の本丸である、解雇規制の見直しに挑みたい」という、父親譲りの歯切れのよい、断言調のワンフレーズを支える具体的な中身については、出馬会見を聞く限り曖昧模糊としている。

「解雇規制は、今まで何十年も議論されてきました。現在の解雇規制は、昭和の高度成長期に確立した裁判所の判例を、労働法に明記したもので、大企業については、解雇を容易に許さず、企業の中での配置転換を促進してきました」

出馬会見では日本の解雇規制の現状認識についてこう語っているが、ここだけでもすでに3つの議論が混在している。

最初の一文の「何十年も議論されてきました」というのは、河野氏も主張している解雇の金銭解決の話だろう。

次の「現在の解雇規制は~労働法に明記したもので」の部分は、労働契約法16条に定められた「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」という「解雇権濫用法理」にあたるだろう。

さらに「大企業については~促進してきました」は会社の経営上の必要から行う「整理解雇」のことで、これを行うために満たす必要がある「整理解雇の4要件」が、①必要性、②回避努力義務、③人選の合理性、④手続きの合理性である。ちなみにこの整理解雇の4要件は法律に明記されたものではなく裁判例の積み重ね(判例法理)だ。

次ページ具体的内容を問われた小泉氏は
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