【産業天気図・化学】原燃料価格の反落で転機。機能品と医薬品が増減益の分水嶺に

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化学産業は転機を迎えた。それを象徴するのが今07年3月期営業利益見通し修正のバラつきだ。三菱ケミカルホールディングス<4188.東証>は減額修正、住友化学<4005.東証>は据え置き、三井化学<4183.東証>は増額修正を、それぞれ発表したのだ。
 石油化学など汎用品分野ではナフサ(粗製ガソリン)を始め原燃料価格の動向が問題。ナフサの1キロリットル当たり価格は03年10~12月時点の2万4000円から06年7~9月時点の5万4100円まで約3年間で2.3倍に達したものの、06年10~12月は総合化学会社首脳によれば4万8000円への反落が見込まれている。すでに化学各社は製品販価第8次値上げの浸透にほぼ成功したが、今後は値下げ対応を迫られることとなる訳だ。総じて各社とも06年度は増益を達成できるだろうが、不透明要因を多分に含んだ下半期となっている。
 今回の原燃料上昇の過程で、日本勢も外資勢と同様、顧客との間でナフサ価格連動方式(ナフサ・リンク・フォーミュラ)の価格決定契約を結ぶようになった。そのため、07年度は売上高に関しては原燃料価格反落が売上高の目減り要因となる。ナフサ価格連動方式は本来なら営業利益額には中立要因のはず。ただし製品の種類ごとの需給緩和が、ナフサ価格下落に等しい販価低下となるのか、それとも価格引き下げがオーバーシュートしてしまうのか、に影響する懸念も残っている。
 反面、増益要因として、06年度に販売価格低下に見舞われた液晶向けの電子材料分野で各社の増産効果が発現すること、そして07年度は薬価引き下げのない年であること、が挙げられる。その結果、07年度は需給が緩和する製品を手掛けている企業は減益に転じる懸念がある。そして液晶向け電子材料分野の売り上げを伸ばせるかどうか、医薬分野の販売数量を伸ばせるかどうか、が利益を左右する分水嶺となる。
【石井洋平記者】


(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部

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