「日本の洋上風力発電」に決定的に足りないもの 国主導の海鳥調査による基礎データが圧倒的に不足

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――地元に漁業者を含む協議会を立ち上げて、国が促進区域を定め、公募により事業者を選ぶという流れで導入が進んでいます。準備区域、有望区域、そして促進区域という段階を踏んで、現在は10海域が促進区域に指定されています。

日本は促進区域指定に必要な洋上海鳥調査データが不足

――国が促進区域を指定する際に環境保全に配慮するため、環境省が調査を行うことになっていますが、日本では基礎的な調査データが不足していると聞きました。

そうなんです。国際環境NGOのバードライフ・インターナショナルによる「欧州諸国における国主導の洋上海鳥調査実施状況」によれば、イギリスでは国が主導して33年間にわたり、船舶を使って洋上の海鳥の観測を行っています。鳥の個体数密度の観測を月1回以上重ねています。オランダ、ドイツ、フィンランドなど欧州各国でも同じような調査が行われ、洋上海鳥分布データが蓄積されています。

――日本で海鳥のモニタリング調査は行われていないのですか。

2018、19、20年に環境省が「風力発電における鳥類のセンシティビティマップ」を作るための調査を行いました。ただ各地で短期的にデータ収集をした3年間のプロジェクトで、欧州各国のデータとは努力量が圧倒的に違います。

――欧州各国では、どうして船舶や航空機を使い広大な海域を対象に何年にもわたって海鳥の調査を行ったのでしょうか。

イギリスでは1970年代に海底油田の開発が始まって、環境影響をきちんと調べなければということで、緊急的に開始されたということです。同時期に北海周辺の欧州各国でも調査が開始されました。背景には、欧州では各国の国内法のほかに鳥類保護指令などEU環境法による規制が厳しいということがあります。

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