「日本の洋上風力発電」に決定的に足りないもの 国主導の海鳥調査による基礎データが圧倒的に不足

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

――油田開発をきっかけに海鳥モニタリング体制が構築されたということですか。

簡単に言うと、イギリスの場合は王室が海面や海底を管理しているので、事業者が洋上に風車を建てたい時には王室から海面を貸してもらいます。王室からすると、自己資産の管理という意味でも、埋蔵資源がどこにあるかとか、ほかの産業と摩擦がおきないか、自然環境への悪影響はないかなどを考慮して、どこの海域を割り当てたらいいのかあらかじめ知っておく必要があります。

また、自然環境や自然史、あるいは科学について国民の理解が深く、あらゆる産業を進める際にも自然環境への影響をきちんと調べ、科学的な根拠にもとづいて慎重な検討がなされます。

海鳥の渡り・越冬経路と促進区域が重なるケース

――そもそも海鳥というのは、海と陸でどのように生活しているのですか。

海鳥は世界に300種以上いて、海の沿岸から沖合まで広範囲に分布しています。海の表層のエサを採る種もいますし、深く潜水して海の中にいるエサを採る種もいます。春から夏にかけての繁殖期になると、離島などに集まって巣をつくり、巣と採餌場所を何度も往復します。その後、秋から冬にかけてはエサの豊富な海域に移動します。

――風間先生はカモメ類についての調査を続けられ、越冬・渡り中継地や飛行経路と促進地域が重なる場所がある、と指摘されています。

現在収集しているデータによれば、日本海側で促進区域が定められた場所には、カモメの渡り経路と重なるところがあります。私は大学4年の時からカモメの生態研究を続けてきて、今21年目なんです。春から夏まで利尻島に家族とともに住んで、日本で繁殖する2種類のカモメ、オオセグロカモメとウミネコを調べています。

――その2種類のカモメは日本列島の周りで生息しているのですか。

2016年ころからは、追跡機器(GPS)をつけて渡り経路を調べています。利尻島で繁殖を終えたカモメ類は、日本列島のまわりをぐるぐる回るように移動します。秋以降は日本全国の海岸線をなぞるように南下して、主に関東から西、韓国付近までの地域で冬を過ごします。カモメは海面の上20~120mのところを回転する大型風車のブレードと同じ高さを飛ぶので、風車と衝突するリスクが高いと言われています。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事