心臓移植のため訪米する日本人を待ち構える困難 現地で待機し、脳死患者の心臓を急いで持ってきて…

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現在問題となっているのは、アメリカに行った後も、移植を待つ間に入院が必要になったり、移植後に入院が長引いてしまったりして、予定以上の費用がかかってしまうこと。

その場合は、最初に払った費用に追加で払わなくてはいけなくなる。しかも数億円を、だ。渡航移植超高額問題である。これに対する一番の解決策は、日本で心臓移植がたくさん行われるようになることではないだろうか。

日本であまり心臓移植が行われない理由には、お金やシステム、教育、死生観、国民性などさまざまな要素が絡んでいるが、ドナー(心臓を提供する人)が少ないことも大きな理由のひとつだ。心臓移植を受けるために、ドナーの存在は不可欠である。それでは、日本でドナーの数が少ないのはいったいなぜなのか。

日本のドナー不足の原因は、脳死判定に消極的だから?

日本のドナー数がなかなか増えないことには、「脳死判定がなかなかされない」ということが大きく関わっているかもしれない。まず、ドナーは、脳死と判定された人のみがなることができるものだ。

脳死とは、心臓は元気に動いているけれど、脳は完全に機能を停止してしまい、元に戻る可能性がないと判断された状態のこと。一方、一般的にいわれている死は、脳が機能していない状態に加えて、体中に血液と酸素を送る機能も停止している状態を指す。酸素を血液の中に取り込むのは肺、その血液を体中に送っているのは心臓だから、普通の死はこの両方が停止している状態を指すのである。つまり、脳死=脳が機能停止した状態、普通の死=脳と心臓と肺が機能停止した状態というわけ。

現在日本では、脳死判定はドナーになる患者のみに行うことができる。逆にいうと、脳死の可能性がある人でも、ドナーにならないのであれば、脳死判定をされることはない。

さらにいうと、脳死判定には、追加検査や患者の家族との話し合いなどさまざま手続きが必要になる。そういった手続きが行われないために脳死と判定されない人も、残念ながら一定数以上いるのだ。

病院サイドにも必ず脳死判定をしなければならないという決まりはなく、ある程度医師の裁量に任されている。だから、患者がドナー登録をしていて、かつ脳死である可能性があったとしても、脳死判定にまで至らないというケースもあるのだ。

また、脳死判定に至らないということ以外にも、アメリカに比べて交通事故や銃被害によって起こる脳死が少ないことや、そもそも移植やドナーの存在が認知されていないこと、人々のドナーへの関心が薄いこと、ドナー登録することへの本人や家族の抵抗感なども、日本でドナーが少ない理由として挙げられるだろう。

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