ノーベル賞の候補に?「やせ薬」開発者3人の功績 発表は7日、前哨戦とされる「ラスカー賞」を受賞

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この3人が大きな実績を上げたことは議論の余地がないが、これだけでは、10%程度の体重減少が期待できる糖尿病治療薬を開発しただけという見方も可能だ。

糖尿病治療薬は、GLP-1受容体作動薬のほかにもたくさん存在する。なぜ、ラスカー財団は彼らを特別に表彰したのだろうか。それは、この薬はダイエットや糖尿病治療だけでなく、幅広い疾患への効果が期待されているからだ。

このあたり、9月21日に発表されたイギリスの『ランセット』誌の記事がわかりやすい。

糖尿病や肥満に効くだけじゃない

GLP-1受容体作動薬の研究開発に、前出の3人が果たした役割を紹介したあと、後半は今後の展望が記されている。そしてそのなかには「心臓保護効果は十分に確立されていて、慢性腎疾患、脂肪肝、神経変性疾患、依存症の研究が進行中」と紹介されている。

GLP-1受容体作動薬の効用は糖尿病や減量だけでなく、さまざまな疾患に及ぶというのだ。

心疾患に関しては、すでに多数の論文が発表されている。

2016年7月にアメリカの『ニューイングランド医学誌』に掲載された「LEADER試験」と呼ばれる研究では、心血管疾患(心筋梗塞など)のリスクが高い糖尿病患者9340人を、リラグルチド投与群とプラセボ(偽薬)投与群に無作為に割り付け、死亡、心血管疾患、脳血管障害(脳梗塞など)の発症頻度を比較した。

すると、3.8年の観察期間(中央値)の段階で、リラグルチド投与により発症リスクは13%低下したという。つまり、GLP-1受容体作動薬は、糖尿病患者において、心血管疾患や脳血管障害も予防するというのだ。

多くの糖尿病治療薬は血糖コントロールができるが、生命予後には大きな影響はないことがわかっている。この点で、GLP-1受容体作動薬は特異な存在だ。

2016年11月には「SUSTAIN-6試験」でも同様の結果が、同じく『ニューイングランド医学誌』報告されているし、2019年7月には心血管疾患をわずらっていない人を対象に、死亡、心血管、脳血管障害のリスクを12%低下させたという「REWIND試験」の結果が、イギリスの『ランセット』誌で報告されている。

GLP-1受容体作動薬の心臓保護効果は、いまや医学的コンセンサスとなっている。

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