ニュース報道の現場から伝える「気候変動問題」 求められる「提案型ジャーナリズム」

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その島では年に一度の大潮の際、海面上昇の影響で島全体が浸水してしまうことがありました。水が引いた後も井戸が海水に浸かったため使えず、島の人々は雨水で生活しなければならないのです。取材を終えて島を離れる際、現地の若者から「私たちの島で起きた災害を、あなたたちはどう感じていますか。私たちがどうすれば良いか、みなさんに考えてほしい」との言葉を投げかけられました。私たち先進国が日常的に排出するCO2が遠い国に暮らす人々の生活を脅かしていることを真に実感した瞬間でした。

共通点は「こんな大雨、経験したことがなかった」

国内でも毎年のように起きる豪雨災害の現場を取材してきました。2009年には山口県防府市と兵庫県佐用町、2011年に紀伊半島、2014年に広島市、2018年には西日本豪雨、2019年には東日本を襲った台風19号などをリポートしました。

こうした水害の被災地を取材するなかで、私はある共通点に気づかされました。それは、被害に遭われた方々が口を揃えて「こんな大雨、経験したことがなかった」と証言したことです。

実際に気象庁のデータでも、80ミリ以上の猛烈な雨の降る回数は40年ほど前に比べておよそ1.7倍に増えています。日本でも確実に雨の降り方が変わり、これまで崩れなかった山が崩れ、川が氾濫するようになったのです。こうした極端な豪雨災害に気候変動が影響していることは、イベント・アトリビューションというコンピュータ・シミュレーション技術により次々と解明されています。

このような気候変動を一因とする災害に対して、被害や現状を伝え、どのように避難するかなど、「適応策」を伝えることはメディアとしての大事な役割です。しかし、それだけではなく、気候変動への根本的な対策、いかにして大元のCO2を減らすのかという「緩和策」をきちんと提示することも、メディアの使命ではないでしょうか。

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