ニュース報道の現場から伝える「気候変動問題」 求められる「提案型ジャーナリズム」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

こうした地域と共生する再エネ取材の記録は、放送後に「山口豊アナが見たSDGs最前線」というタイトルでYouTubeでも配信しています。特に、独自の手法で地熱発電の開発に取り組む業務スーパー創業者を特集した動画の再生回数は170万回以上に上りました。予想をはるかに上回る人たちが視聴してくれています。

業務スーパー創業者・沼田昭二さん(左)が進める地熱開発現場

「伝えるべきテーマ」が地方局にこそたくさんある

地方には手元足元にある自然資源を生かして再エネ導入に挑む住民や企業、行政などさまざまなステークホルダーが存在しています。だからこそ、気候変動対策に関する報道は地方局こそが「伝えるべきテーマ」を多く持っていると思います。地域に根ざし、継続して取材・報道し、その変化や成長の過程をきめ細かに発信できるのは、地方局ならではの強みですよね。

日本で再エネ比率が最も高い秋田県(注:地域的エネルギー自給率、永続地帯2023年度版報告書より)には、およそ300基の陸上風車が沿岸部に立ち並び、すでに県内の全世帯分を上回る規模の電力を生んでいます。この風車、最初の頃は県外の大企業が建設・運営するものが多かったそうです。しかし、都会の大企業が突然やってきて開発し、その利益を自分たちだけのために使うという当時の構図は、地域にとってはメリットがありませんでした。

その時、秋田の人々の中で、その状況を「まるで植民地のようだ」と捉え、そこからの脱却を図るために立ち上がる人たちが現れました。地域が主体的に関わる風力発電への挑戦を始めたのです。そして、地元の中小企業で連合を組み、町工場で部品を調達するなどし、地域と共生する風車を次々と建てていったのです。さらに今、秋田では洋上風力の建設も進んでいて、2030年以降には再エネ100%の県になるとされています。

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事