金融庁が生命保険業界の「便宜供与」を実態調査 「マネードクター」のほか「保険市場」も照準に

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また、広告出稿を営業部門で決裁していた生保では、広告出稿が宣伝効果だけでなく自社商品の優先的な取り扱いという営業上の効果も狙った事実上の便宜供与であると、金融庁に判定されるリスクが高まったと見て、営業部門から広告部門へ決裁権限を場当たり的に移す動きも足元で出てきた。

金融庁は現在、アドバンスクリエイトと生保の広告取引などの状況について、生保各社へ個別にヒアリング調査を始めている。そこに便宜供与に関する調査票も追加したことで、取引の見直しに動く生保は今後増えそうな気配だ。

アドバンスクリエイトの広告事業(メディア事業、メディアレップ事業)と再保険事業の売り上げは、2023年9月期で合計約46億円。全社売上高の45%を占める。生保による取引見直しの動きが広がった場合は、2025年9月期以降の業績に大きな影を落とすことになる。

またアドバンスクリエイトは足元で、財務上の火種を抱えている。監査法人から会計処理をめぐって、「再検証」の指摘を受けているのだ。

同社は保険契約から得られる将来の代理店手数料収入を見積もり、その割引現在価値(PV)の合計額を売り上げとして計上するという会計処理を採用している。簡単に言えば、向こう数年分の手数料収入を先食いするかたちで、「契約初年度に一括して計上する」(同社IR部門)イメージだ。

その現在価値の計算において「実態との乖離(かいり)が見られるため、見積りの再検証が必要である」と監査法人から指摘を受け、弁護士などに調査を依頼しているという。

アドバンスクリエイトは2002年に上場して以降、これまでに監査法人が4回変わっている。現在の桜橋監査法人に変わってからは10年以上同法人の監査が続いていただけに、今回、指摘を受けたときの戸惑いや衝撃は大きかったはずだ。

期末配当を無配にすると発表

指摘を受けてから3カ月近くたった今もなお、再検証の作業は終わっていない。再検証の結果によっては、配当の「分配可能額が確保できるか不明瞭」(アドバンスクリエイトの公表資料)であるため、9月18日には期末配当を無配にすると発表した。

またアドバンスクリエイトは、低調な保険販売や想定以上の解約の発生などで2023年9月期に17億円を超える最終赤字を計上し、財務体力が低下。今年6月に大和証券を割当先とするMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権)を発行し、20億円前後の資金調達ができるとしている。

ただ、今後も投資家の期待を裏切るようなことが続けば、株価の下落によって行使価額が低下し、十分に資金調達できなくなる恐れがある。

金融庁による実態調査も相まって、FPパートナーとアドバンスクリエイトの大手2社に対する動向に、投資家の注目が今後一段と集まりそうだ。

中村 正毅 東洋経済 記者

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なかむら まさき / Masaki Nakamura

これまで雑貨メーカー、ネット通販、ネット広告、自動車部品、地銀、第二地銀、協同組織金融機関、メガバンク、政府系金融機関、財務省、総務省、民生電機、生命保険、損害保険などを取材してきた。趣味はマラソンと読書。

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