破竹の勢いを見せる「インド」は日本を超えるのか 市場価値は高まる一方、埋まらない貧富の格差

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恩恵の多くは確実で目に見える形で提供され、人々の暮らしを変えていった。生活スタイルは変化し、LEDの照明、安価なスマートフォン、無料に近いと思える安価なモバイルデータ、そういった時代の先端をいくツールたちが、旧来の貧しく汚いイメージのインド人の暮らしを変えてきた。

商取引においてはデジタル化が進んだ。

これは国民会議派のマンモハン・シン前政権時代に始まったものを、モディ政権が引き継いだものだ。生体認証識別システムであるアダールはデジタル化による効率化の成功例となっている。

税金の見直しも行われた。日本の消費税にあたる間接税の州間格差を解消し、公的支出に資金が開放され、法人税率の引き下げにより民間資金の調達が可能になった。

2016年11月8日には、モディ首相が突然、すべての高額紙幣を無価値にすると宣言した。犯罪者から「ブラックマネー」を奪うことが目的とされ、当初はあまりにも荒唐無稽な政策で経済活動に深刻な支障をきたした。

しかし、これによってインドのキャッシュレス化が一気に進んだ。タンス預金への信頼がなくなり、クレジットカードの利用、銀行口座の開設が進み、そして日本のPayPay のもとになったインド発のQRコード決済のシステムが青果店から雑貨店まで田舎の市場の隅々にまで広がった。

今後のインド経済もおおむね楽観視されている。2023年度の実質GDP(国内総生産)の成長率は8.2%だったとインド政府は発表した。製造業などが好調で、予測を大きく上回った。実体経済が伴っていないとして、この数字より低く見積もる向きもあるが、どんなに低く見積もっても5%以上はある。

日本をはじめとする西側各国が先進国病に悩む中、経済好調なアメリカを優に越えており、減速を続ける中国経済に抜かれることは当面ないだろうというのが大方の見方だ。

著しい格差と不平等

しかしその一方で格差は拡大し、経済的利益は不平等に広がった。

インドの成長の大部分は、巨大で厳しく管理された企業と、高所得者の頂点に立つ一部の人々の動向に左右されている。世界不平等研究所によると、インド人の上位1%が年間国民所得の約23%、国富の約40%を占めているという。

経済規模が世界第3位になったとしても、貧しい国であることに変わりはなく、国民1人あたりの所得ではまだ世界143位だ。海外でより良い収入を得ようとだまされて、ウクライナ危機ではロシアの傭兵として戦ったインド人もいる。

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