日本がアメリカにかなわない根本的理由とは何か 自民総裁選の議論も日銀記者会見もつまらない

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と書いたが、20日15時半から行われた植田総裁の会見は、いつもよりは少しよかった気がする。植田氏はアメリカで教育され、活躍してきた経済学者であるから、もともと率直で、一生懸命わかりやすく説明しようとしている。

それが日本銀行総裁という枠組み、日本社会という枠組みではうまくバランスが取れないことがあるだけだ。最初の審議委員のときに失言した反省もあるようだ(2008年1月28日付日本経済新聞の「私の苦笑い」というコラム参照)。ただ、植田総裁になってから、彼の率直さが記者たちにも少しずついい影響を与えているように感じる。少しは希望があるか?

ただ、幹事社の冒頭の質問などでは不満も残った。「金融市場が不安定」なら利上げしない、ということの判断基準に質問があったが、もっと遠慮せずに具体的に、「金融市場」とは、本来は国債市場だと思いますが、この件では、為替市場と株式市場のことですよね?などと聞いてほしかった。

しかも、為替の話は別に出てくるから、日銀が「金融市場が不安定なうちは利上げしない」というときの金融市場とは株式市場のことですよね? それでいいですか? などと確認する。

そして、だとすると、株価が不安定ということですが、株価はいつも動いていますよね? 株価が下がったらいけない、悲観的なときが不安定ということですか?それともボラティリティ?変動が大きいのが不安定ということですか? でも株式市場は、日経平均4万円が近くになっており、この数年の上昇から言っても、この30年でいちばん悲観的から遠いですよね? それで利上げできないなら、今後、株価が下落トレンドに入ったら永遠に利上げできないということですか? といったように聞いてほしかった。

20日の植田総裁記者会見は、2%だけ希望が見えた

もう1つ。為替変動も実際には気にして利上げを決定しているのに、物価だけと言い続けるから、市場はどうせ為替で利上げを決めると思っているので、必ず日銀と市場の間に認識ギャップが生まれてしまうのでは? というような有益な質問があった。

植田総裁も重要な論点だ、とコメントしていたが、総裁が、為替を直接のターゲットとしないということだ、と理論的な枠組みを維持したコメントをしたが、本当であれば、以下のような質問をさらにしてほしかった。

「もちろんそうだ。しかし、日銀の極端な金融緩和(異次元緩和など)で為替レートが明らかにファンダメンタルズから異常に乖離したものになって、金融市場にも経済にも大きな歪が出ているとき、これは日銀の極端な金融政策のためだけから生じたひずみなのだから、物価のためとは言え、為替への大きな歪という直接の悪影響(副作用というよりも)が大きく出ているときは、物価と為替市場と両方を直接に考えないといけないのではないか?」

しかし、私の絶望は今回100%から98%ぐらいまで低下し、2%希望が見えた、まあまあの記者会見だった。なお、この会見については私のブログ『小幡績PhDの行動ファイナンス投資日記』でも追記しているので、読んでいただけると幸いだ(本編はここで終了です。この後は競馬好きの筆者が週末のレース予想などをするコーナーです。あらかじめご了承ください)。

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