瀬戸際のオリンパス、巨額粉飾の全貌、上場維持なら日本の株式市場に禍根
十数年にわたり巨額の損失を隠蔽し続けてきたオリンパス。その全貌が明らかとなってきた。
事態の解明を担当する第三者委員会の調査によれば、17のファンドや企業が損失隠しとその後の資金補填に利用され、総額は1350億円に及ぶ。秘密は下山敏郎、岸本正壽、菊川剛と3代の社長に共有され、完全に闇に葬られる寸前だった。その背景には、互いにもつれ合い、自縄自縛となった、各者の思惑があった。
「飛ばすしかないな」 野村金融マンと結託
発端は、バブル崩壊後に膨らんだ有価証券の含み損だ。1985年のプラザ合意後の円高で、輸出主体の事業構造は急速に厳しくなった。当時の下山社長は財テクにより本業の苦戦を補う戦略を進めたが、90年にバブル経済が破綻。数百億円規模の含み損を抱えた運用担当者、山田秀雄・元監査役と森久志・元副社長は、さらにハイリスクのデリバティブ(金融派生商品)などで挽回を試みて、98年までに逆に損失を1000億円弱に膨らませてしまった。
「何とかならないか」--2000年からの時価会計導入を控え、隠し続けてきた含み損が表面化することをおそれた山田、森両氏はなじみの金融マンに泣きついた。アクシーズグループの中川昭夫氏、佐川肇氏および、グローバル・カンパニーの横尾宣政氏である。3人はいずれも野村証券出身の金融マンで、オリンパスの投資業務を担当していた。
特に横尾氏は、野村証券時代に新宿ビル支店の支店長を務めた経歴を持つ。同支店長は京都、札幌などと並び、将来の役員候補と見なされる花形ポストだ。だが、当時オリンパスを担当し、菊川元社長と太いパイプを築いていた横尾氏は会社を辞め、独立。証券業界の雄、野村の役員の地位に見切りをつけ、オリンパスとの一蓮托生を選んだ。