「アメリカだけに頼れない」韓国で広がる核武装論 日韓同時の核武装を訴える書籍が日本でも出版
鄭氏は日本での出版にあたり、日本も核保有を真剣に考慮すべきだと提案する。日本は世界唯一の戦争被爆国であり、核兵器など核に対する強い拒否感を持っていることは理解できるとしながらも、次のような情勢判断ゆえに、日本の独自核武装が必要なのではないかと訴える。
これには、アメリカが今後、「世界の警察」としての役割を放棄し、同盟を軽視する政治指導者が出現したらどうなるか、という可能性が背景にある。台湾有事が仮に発生してもアメリカは台湾防衛に乗り出さず、インド太平洋地域でのアメリカのプレゼンスを縮小させるとなった場合、非核保有国である日本はわが身を守れるのか、ということだ。
韓国で独自の核武装論が広がっている背景には、現在の尹政権が強化しているにもかかわらず、アメリカの「核の傘」を信頼できないという韓国の感情が表出している。米韓同盟を信じながらも、一方でアメリカの態度に不信感を拭えない――。そんな韓国人の気持ちが垣間見えるのだ。
例えば、本書でも触れられているが、朝鮮半島で有事が発生し、同盟関係にある韓国を防衛しようとアメリカ軍が出動した場合、北朝鮮がアメリカに対し「ワシントンやロサンゼルスをICBMで攻撃する」としたら、アメリカはそれでも朝鮮半島で韓国を守ることができるのかという疑問が代表的な不信感の理由だ。自国が攻撃されようとしているのに、それでも韓国という他国をアメリカは守ってくれるのか、ということだ。
「抑止力は十分」反論も
ただ、そのような不信感はあまりにも現実離れしているとの主張も韓国では根強い。
例えば、鄭成長氏の著書とほぼ同時期に日本で翻訳出版された『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)の著者である鄭旭湜(チョン・ウクシク)氏がその代表的な論者だ。韓国では著名な平和活動家であり、『ハンギョレ』平和研究所所長の鄭旭湜氏は、韓国では「核インフレーション」、すなわち北朝鮮による核の脅威があまりにも誇張されている、と指摘する。
これには、次のような主張が韓国にある、と紹介する。
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