渋谷・おしゃれ飲食街の「インフレ」が進む"裏事情" 立ち飲みのワイン1杯1200円も躊躇なく飲む若者たち
生ビールは700円超えも普通にある。おつまみも手の込んだ料理なら1皿1000円、2000円を軽く超える場合も多い。
例えばテーブルクロスが敷かれたレストランでソムリエが恭しく注ぐワインがそれくらいの値段でも何ら違和感はないが、そうではない。店内は流行を取り入れたオシャレな空間で、流行りの音楽がクラブさながら流れていたり、カジュアルなカウンター席や立ち飲みだったりで、若くてオシャレなスタッフがフレンドリーな接客でラフに提供される。
そうしたカジュアルな雰囲気はいかにも20代30代に好まれそうだが、価格はカジュアルではない。そんな店が若者から人気を集めている。
決して「ワイン1杯1200円は高い」と非難したいわけではない。筆者は個人的に適正価格に基づいた飲食店の値上げは賛成派だし、相応の品質のワインを提供しているはずと思っている。ラフな立ち飲みで1200円に相当するワインを提供すること、すなわち提供される環境と提供される商品価格のイメージの乖離に驚いているのである。
「内的参照価格」という言葉がある。商品には多くの人が「これくらいだろう」とイメージする価格があるということで(例えば、狭い店内でサクッとたいらげる牛丼なら1杯400円くらいが相場だろう、といったイメージのこと)、この場合は内的参照価格から大きく外れている。
にもかかわらず、それらの店を「コスパがいい」と評する口コミすら見たことがある。思わず「コスパとは?」と首を傾げたくなる。
渋谷で飲む若者は一体何に価値を感じてその値段を受け入れているのか? 外食は小売りと違い、商品そのものだけでなく接客や空間、雰囲気などの「体験」込みで値段を払ってもらうビジネスモデルだ。商品そのものの価値以上に、そうした店は魅力的な外食体験をお客は感じているということなのだろう。
SNSの功罪も値上げの要因
値段が上がっているのには、店側の都合もある。物価や人件費の高騰ももちろんあるが、SNSの影響も大きい。
近年はよくも悪くもSNSが集客に影響を及ぼしている。インフルエンサーに取り上げられるなど何かの拍子でバズり、普段は来ないような若い人が詰めかけることがある。
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