進化したJR四国の振子特急、2700系「南風」の実力 出力も設備もランクアップした最新の気動車

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進行右手眼下に吉野川を挟む街を見下ろしながら箸蔵を通過。「しまんと4号・南風4号」の5両編成が運転停車していたが、こちらは速度を下げない。振子と合わせた高速化メニューの中で多くの駅を一線スルーにしているので、ともすれば駅通過に気付かぬほどスムーズだ。

急勾配を迂回するU字ルートの底で吉野川を渡って徳島線合流の佃を通過。しばし高速を蘇らせてから一気に減速すると、阿波池田に到着する。ホーム対面に徳島行き特急「剣山4号」が待っている。4分接続の見事なダイヤだ。

東西にゆったり流れる吉野川が南北に向きを変えると、いよいよ中流域の四国山地横断区間。急流が飛沫を上げる小歩危から大歩危へと峡谷の車窓が続く。「南風1号」での通過時間帯はまだ早いが、日中になればラフティングのゴムボートも見られる。窓に額を近づければ、尾根付近まで農家が点在する険しい山村風景が広がる。

『鉄道ジャーナル』2024年11月号(9月20日発売)。特集は「特急気動車の現状」。書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

並走する高知自動車道は時間・価格両面で脅威

大歩危に到着すると「きいろいアンパンマン列車」と行き違った。祖谷渓への観光拠点でもあるが、駅としては駅員無配置である。次の停車駅は吉野川の本流から分かれた大杉。列車は5両だが、それでも1号車はホームにかからずドア締め切りとなる。

深い山中のこと、トンネルが多く、駅間では外でもスマホが「圏外」を表示する。だから2000系の時代までは車内のネット環境も芳しくなかったが、新型の2600系・2700系においては登録制でフリーWi-Fiが利用できる。ただ、“サクサク”動作する…とは言いがたい。

過酷な線形をものともしない走りっぷりはなお続くが、大杉からは四国中央市の川之江からほぼまっすぐ南下してくる高知自動車道と並行する。高速道路は高知まですべて四車線で通じている。法定速度での計算では岡山―高知間(IC間)は2時間を要さない。ハンドルを握れば実際は…。

また、岡山駅―高知駅間の高速バスを調べると4100円で列車の運賃分(3740円)とさほど変わらず、特急料金分(2530円)が差となる。列車側も対抗手段の企画きっぷがあり、高知側からは「岡山指定席トク割きっぷ、岡山側からは「e5489専用高知観光きっぷ」が検索できたが、どちらも指定席、かつ会社を跨るので「スマートえきちゃん」では引っ掛からなかった。簡単に安い運賃が出てくる高速バスに比べ探し回るのには手間暇がかかる。

四国最高所駅の繁藤から一気に下って空が開けてくると土佐山田。地方の市街地の景観としては阿波池田以来、平野の広がりを感じる地としては琴平から1時間半ぶりとなる。時速130km近いトップスピードが蘇り、さらに下って太平洋岸の雰囲気に接するのが後免である。

ここまで来ると田園と家々が混在する都市郊外の風景が広がり、コンパクトな高知の車両基地をかすめると、ほどなく特徴ある木造ドームの上家を架けた高架駅高知に到着した。時刻は9時39分。1番線に入ると、2番線には12分接続で出る「あしずり1号」の2000系2両編成が停車している。

鉄道ジャーナル編集部

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車両を中心とする伝統的な鉄道趣味の分野を基本にしながら、鉄道のシステム、輸送の実態、その将来像まで、幅広く目を向ける総合的な鉄道情報誌。創刊は1967年。

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