進化したJR四国の振子特急、2700系「南風」の実力 出力も設備もランクアップした最新の気動車

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「しこくスマートえきちゃん」はJR四国の駅や列車内の随所で宣伝されている。座席の背面テーブルにも「JR四国列車運行状況」「土佐くろしお鉄道情報」「四国の観光情報はこちら」などと合わせてQRコードのステッカーが並ぶ。

一方、その下の網ポケットには「特急南風の指定席はネット予約の5489で!」と、案内が差し込んである。小さな所帯のJR四国は、JR西日本のシステムに相乗りしているのだ。主要区間の値段も載っているが、チケットレス特急券は通常の紙切符より少し安く、さらにJR西日本のJ-WESTカード会員だと自由席の価格を下回る。そのようにネット販売に誘導して駅や車内での発券を減らし、省力化につなげてゆく時流の施策が伝わってくる。

番の州高架橋から雄大なカーブを描いて宇多津に到着すると、高松発の「しまんと3号」が渡り線を通って後部に入線。2755+2707のモノクラス2両編成を「南風」の後部に連結した。号車番号は4・5を飛ばして6・7号車である。

丸亀で「あかいアンパンマン列車」編成の「南風2号」とすれ違い、都市の景観を離れて多度津からは単線の土讃線に進む。善通寺に続いて琴平に停車する。

2000系の1.36倍のハイパワーで四国を横断

土讃線はこれより非電化区間となって山間に分け入り、まずは吉野川流域へと讃岐山脈を越える。速度は平坦区間の時速120km台から時速80kmに近い時速70km台まで下がるものの、25パーミル勾配に右へ左へ半径300mの曲線が絶え間ない中を振子を駆使して突進する速度感は、決して遅いと言えたものではない。

各車2台装備するエンジンは、1基あたり331kWで馬力の数値は450PS。2000系(330PS)の1.36倍、N2000系(350PS)の1.28倍という高出力だ。このエンジンのパワーアップにより発車時の加速が一段と鋭くなっており、平坦線ではわずか60秒で時速100kmに到達する。高速域の加減速の反応もひとしおで、新幹線接続列車として必須の定時ダイヤの維持に貢献している。県境のトンネル内の直線はすかさず時速100kmオーバーに持ち込む。下り勾配は排気ブレーキが唸る。

その一方、最新の振子車両であるJR西日本の新型「やくも」273系は、曲線進入進出時の振子動作のズレを完全に解消する「次世代振子システム」を採用したが、誕生が5年早い四国の2700系は従来タイプの制御付き自然振子である。双方ともの開発者である鉄道総研によると、2700系を製造した当時、次世代振子は残念ながらまだ最後の課題をクリアできていなかったためであるそう。

「阿波の青石」と呼ばれる変成岩が荒々しく露出する様子を見て渡る第二吉野川橋梁。これより土讃線の景勝区間をたどる (小歩危ー大歩危)(写真:久保田 敦)
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