チョーヤが「前代未聞の梅不作」でも平気だった訳 40年の信頼と「一見非合理」な非専属契約の繋がり
そのさなかにあって梅酒をメインに据えるチョーヤは、逆に右肩上がりの成長を続けている。2023年12月期の売上高は139億円で、2016年12月期の111億円から30億円弱ほど積み上げた。社員数が約130人という規模感を考慮すると、存在感はより際立つ。
そんなチョーヤが原料に使用しているのは、国産梅のみだ。なかでも中心となっているのは、和歌山県産の「南高梅」という品種。比較的大粒で、種が小さく果肉が厚いという特徴がある。
しかし、和歌山県産の梅の入手は簡単ではない。全国の梅の平均総生産量は年間9万~12万トンで、うち60~70%が主産地の和歌山県に集中している。だが、そのうち70~80%は梅干し加工に使われているからだ。残りが「市場出荷用」として、小売店やスーパーなどと梅酒メーカーが仕入れる梅。しかもチョーヤのように梅酒を専門とし、毎年大量に梅を必要としているメーカーは数少ない。
さらにもう1点、梅の仕入れには課題がある。仕入れ期間が短いのだ。そもそも、梅干し用と梅酒用の梅には大きな違いがある。梅干し用の梅は、塩漬け、天日干しの「1次加工」を主に農家が行い、それを梅干し業者が買い取って、減塩、味付けの「2次加工」を行って完成する。このため梅干し業者は、農家が在庫として持つ1次加工された梅を、一年中いつでも購入できる。
一方梅酒は、一からメーカーで加工するため、生で仕入れなければならない。だからチョーヤの仕入れ時期は、梅が熟す6月の約1カ月間のみ。ここに、一年間すべての梅の仕入れが集中せざるを得ないのだ。
農家と「緩やかにつながり」質と量を確保する
流通量が少なく、短期集中となる梅酒用の梅の仕入れ。この難題を克服するためにチョーヤは、半世紀かけて産地の農協、農家と関係を紡いできた。
筆者は、最近コーヒーの世界でよく聞く、農家との専属契約があるのでは……と考えていたのだが、違った。毎年、農協を通じて農家と話し合い、自社が必要な量を確保してもらっているという。
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