《進化するノンアルコール飲料4/ビール》ますますおいしくなるノンアル市場の先駆者
ノンアルコール飲料市場の急成長を牽引してきたのは、何といってもビール風味だ。2009年にキリンビールが発売したビールテイスト飲料「キリンフリー」が、そのパイオニア的商品となっている。
それまでも、アルコール度数が0.5%以下の「ノンアルコール」飲料は存在していたが、アルコール分を完全に含まない「世界初の0.00%」のビールテイスト飲料の開発に成功したのはキリンが初めて。開発のきっかけは、「飲酒運転を撲滅するため」だったと、キリンビールの松沢幸一社長は言う。
実際、発売直後からキリンの予想を超えるほど人気はすさまじく、当初、発売初年の年間販売目標63万ケース(1ケース633ミリリットル×20本で換算)を初月だけで突破。今では、家庭用600万ケース超を出荷、業務用でも10万店以上で取り扱われている。
「いかにビールらしい味に近づけるかに苦労した」と、営業本部マーケティング部商品担当の梶原美奈子氏は吐露する。通常、ビールの製造は麦芽原料の麦汁を作り、苦みと香りになるホップを加える。その麦芽に酵母を加えることで発酵が起こり、アルコールができる。キリンフリーの場合、麦汁とホップを使用する点は同じだが、酵母を使わないため、麦汁の雑味や甘みが残るうえ、酸味が強くなってしまう。
そこで、香料の調合技術で酵母が作り出していた香りを再現した。さらに酸味を抑えるという、清涼飲料に使われる技術も用いた。発売まで要した期間は2年。発売後も、短期間で2度のリニューアルを行った。
10年12月に発売されたキリンフリーでは、今まで麦芽のうま味を引き出すために使用してきた食物繊維を完全にやめ、麦芽100%の麦汁を使用し、よりビールらしい味に仕上げた。
「ビール派の人はこだわりが強いからなかなかキリンフリーを手に取ってくれない。だからこそ、リニューアル発売をきっかけにビール派の人や飲まず嫌いの人にも興味を持ってもらえればと思う。今後もリニューアルを続けていきたい」と、梶原氏は語る。