武田薬品、わずか4年で2回「国内リストラ」の中身 手厚い「退職条件」でも、現役社員に渦巻く不安

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FCPの下での退職条件は手厚い。勤続年数の3倍(60カ月分が上限)の給与が特別加算退職金として支給され、再就職支援サービスも最長で2年利用できる。武田の平均年収が1000万円を超えることを考えると、管理職であれば、総額8000万円程度の退職金を手にする可能性もありそうだ。

とはいえ、現場社員の心中は穏やかではない。

業界全体でMRが削減傾向にある中、好待遇のMRポジションで転職することはもはや難しい。退職を選ぶ場合、収入の大幅ダウンか、まったく異なる業界に飛び込む覚悟も必要となる。

前出の現役MRらは「前回のFCPでも転職支援を受けられたが、うまく転職していった人を知らない。よい条件のところへ行けるのは結局、他社につてがある人だけ」「本社経験のあるMRでないと転職は難しい」と不安がる。

残ったところで安泰でもない

では武田に残ったところで安泰かといえば、そうでもない。組織再編によって4つの部門が2つになれば、単純に1地域当たりのポストが減ることになり、勤務地が変わる可能性が高まるからだ。

MRは転勤ありきの仕事だが、近年の武田では、子育てなどのライフイベントに配慮した配属が重視される傾向にあった。しかしある現役MRは、「2020年のFCP実施以降、その前提は崩れた」と振り返る。

当時、武田は希望退職に関する面談で、社員に対し「勤務地の保証はできない」と伝えたという。その言葉を受け、「とくに(子育てなどで)時短勤務をしていた女性MRが多く辞めていった」(同MR)。直近まで武田に在籍していた元MRは「本部のポストは減る可能性が高いうえ、現場に残っても従来のエリアにいられるかという不安が付きまとうだろう」と推察する。

2019年にアイルランドの製薬大手・シャイアーを約7兆円で買収して以降、武田社内では一段とグローバル化が加速し、国内売上高は全社の1割を切る。一方で収益性の高い自社開発品が豊富な状況にはなく、新たに外部から大型品を導入できる財務的な余裕もない。構造改革によってスリム化した体制の下、後期開発段階にある6つの治療薬候補の開発を確実に成功へと導けるかが問われてくる。

武田は来期以降、業績の低迷期から抜け出せると強調する。繰り返されるリストラで優秀な人材を失った後に、再度上昇する力は残るのか。先行きは視界不良だ。

東洋経済オンラインのデジタル特集武田薬品 ウェバー10年体制の現在地」では、クリストフ・ウェバーCEOへのインタビューをはじめとする記事を掲載しております。※全文閲覧には会員登録が必要です。
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兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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