武田薬品、わずか4年で2回「国内リストラ」の中身 手厚い「退職条件」でも、現役社員に渦巻く不安

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武田はこの春から、コア営業利益率の向上を目指して、グローバルで大規模な構造改革に着手している。今2025年3月期には、構造改革費用として約1400億円を計上する予定だ。すでにアメリカ・サンディエゴにある研究所の閉鎖や、ボストンの研究所でのリストラが明らかになっていた。

武田薬品の国内・海外売上高の推移

日本では、年間700億円以上を稼いでいた高血圧症薬「アジルバ」が2023年6月に特許切れを迎えて以降、売上高の減少が止まらない。その影響もあり、2024年3月期の国内売上高は前年から約600億円も減少し、4514億円となった。

そのうち1000億円近くを占める屋台骨の胃潰瘍薬「タケキャブ」は、2031年に特許満了日を迎える。そう遠くない将来に売上高の減少が想定されるが、国内で発売を控える新薬パイプラインに、これらを補えるものは見えていない。

こうした事情も考慮すれば、国内の人員削減はやむをえない状況といえる。

2事業部に再編する狙い

武田は人員削減を経たうえで、がん領域以外の国内の営業組織体制を2025年4月に変更する方針だ。JPBUでは、これまで消化器系疾患、神経精神疾患、希少疾患、ワクチンと4つの事業領域で成り立っていたビジネスユニットを、「第一事業部」と「第二事業部」の2つに再編する。

第一事業部はワクチンのほか、タケキャブのようにすでに販売から時間が経ち、いわゆるルート営業が必要な製品群を担当する。第二事業部は、従来領域ごとにユニットが分かれていた消化器系、神経精神、希少疾患の薬をすべて扱う。こちらは新薬が中心となり、治験データを医師に説明するなど、専門性の高い仕事となる。

武田ではとくにこの数年、グローバル標準に合わせるかたちで領域別の体制を強化してきたが、「1つの病院に会社の代表となるMRが回っていた昔と異なり、各領域のMRがばらばらに同じ病院を訪問するようになったことで、病院側からすれば武田の『顔』がわからなくなっていた」(同社の元MR)。薬の採用権限を持つ病院の薬剤部長とのつながりが希薄になるなど、営業力の低下を危惧する声も上がっていた。

この点、事業部が2つに集約されれば、過度な縦割りにならず、医療機関との関係を維持しながらより効率的な営業体制が構築されると歓迎する向きもある。他方、事業部数が減ることによって、現場だけでなく本部人員も削減されることは想像にかたくない。

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