新・企業力ランキング トップ2000社 --多様な財務指標からわかった会社の“実力”

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新・企業力ランキング トップ2000社 --多様な財務指標からわかった会社の“実力”

東洋経済が毎年作成している「新・企業力ランキング」は財務面での企業の真の力を探るものだ。評価は成長性、収益性、安全性、規模の4つのカテゴリーを掲げ、20評価項目の財務データを多変量解析の「主成分分析」で相対評価を行った。さらに、それぞれの得点を合計して総合ランキングを作成している。

ランキング対象企業は2011年9月1日時点で上場している一般事業会社(銀行、証券、保険、その他金融は除く)だ(評価方法・評価項目の詳細はこちら)。

総合ランキングのトップは国際石油開発帝石だ。成長性821点、収益性987点、安全性940点、規模1000点といずれも高得点。合計の総合得点は3748点で2位以下を大きく引き離した。

国際石油開発帝石は、原油・天然ガス開発生産で国内最大手で、好業績企業として知られる。11年3月期の売上高9430億円に対して営業利益は5297億円。売上高営業利益率は56.2%と驚異的な数字となっている。株主持分比率も70%前後を維持するなど安全性も非常に高い。

経済環境も後押しする。東日本大震災後、原発の安定稼働が難しくなっているため、電力の安定供給のために原油や天然ガスの確保が欠かせなくなっている。政府が黄金株を保有するなど政治に影響されやすい面もあるが、好業績はしばらく続きそうだ。

■総合ランキングはこちら
1~496位
502~997位
1005~1496位
1503~1995位

2位は昨年に引き続きヤフーだ。これまで際立っていた成長性の高さは悪化したものの、安全性と規模が高くなり昨年と同じ順位を維持した。11年の売上高は2924億円と大手企業と呼ばれる水準まで増えてきた。今後は安定的な成長をいかに持続できるかが課題だ。

3位も2位同様、昨年と同じ武田薬品工業。各項目ともバランスよく得点した。

同社は過去のランキングはトップ2回を含みすべて3位以内という上位の常連。高い収益力に加え、実質無借金と安全性の高さにも定評がある。新薬開発の遅れなどが懸念されているが、今年に入り、潤沢な資金を使ってM&Aを行っている。今後、これらがどのように業績に貢献していくかで高順位が維持できるかが決まりそうだ。

4位はNTTドコモ。ライバルのKDDIは15位、ソフトバンクは102位と頭一つ抜けている。iPhone4Sが話題のKDDIやソフトバンクに比べて新規顧客獲得では劣勢が続くNTTドコモだが、分厚い顧客基盤を武器に、業界のガリバーの地位は揺らいでいない。

さて、今回のトップ10の中で注目なのが5位のディー・エヌ・エーと6位のグリーだ。大手ソーシャルゲームサイト「モバゲー」を運営するディー・エヌ・エーは1999年設立、05年上場の新興企業。プロ野球、横浜ベイスターズの買収でも話題だ。大手ソーシャルゲームサイト「GREE」を運営するのがグリー。04年に設立し、08年に上場とディー・エヌ・エーよりも若い。2社の評価の内訳を見るとほぼ同じ。規模面でディー・エヌ・エーが若干上回っているのが目立つ程度だ。財務面で見ると実力はほぼ拮抗していると言ってよい。

ソーシャルゲーム市場で競い合う両社は、ゲーム会社の囲い込みや知的所有権を巡って訴訟を繰り広げるなど、まさにガチンコ対決の状態だが、今後、ソーシャルゲーム業界を健全に発展させるうえで、中心企業としてより上のレベルの役目も求められる。こうしたリーダー的役割と成長の両立を果たすことができれば日本を代表する企業となることも夢ではないだろう。

以下、7位キヤノン、8位任天堂と続く。任天堂は昨年までの3年連続1位から陥落。売上高がピーク時の09年1兆8386億円から11年には1兆143億円まで減少するなど業績悪化が目立つ。3DSの値下げ、来年に発売する新機種「WiiU」で成長軌道に復帰できるか。

続いて業種ごとに見ていこう。総合ランキングの掲載会社(該当2001社)を対象に業種別に最大上位20社のランキングを紹介している。

■業種別ランキングはこちら
業種別ランキング(1)業種別ランキング(2)業種別ランキング(3)

この中で上位にランクインした企業が多かったのが情報・通信業だった。業種別上位のヤフー、NTTドコモ、グリーは総合ランキングでも10位以内。20位のマクロミルも全体75位と全体ランキング100位に29社も入っている。情報・通信業は上位100位(101社)のうち28.7%を占める。全対象2001社では218社と10.9%なので上位企業にこの業種がいかに多いかが分かる。

一方でリーマンショック以降、業績悪化が目立つのが輸送用機器だ。第1回のランキングでは、トヨタ自動車はじめ日産自動車、デンソー、ホンダなど多くの自動車関連企業が上位20位に入っていた。それが今回は業界トップのデンソーですら総合28位。1回、2回は連続2位だったトヨタ自動車は36位まで落ちている。

同じく電気機器/精密も大手企業の評価は高くない。キヤノン(7位)やファナック(9位)など上位にランクインしている企業もあるが、2年連続赤字のパナソニックは119位。3年連続赤字のソニーは170位。対象企業は3000社以上あるため必ずしも低い順位ではないが、パナソニック、ソニーという世界的な知名度からすると物足りない。このように日本を代表する電機メーカーの評価は全体的に低下してきている。

ちなみに不正経理問題に揺れるオリンパスはランク外の総合2128位(決算訂正前のデータ)。10年861位、09年666位、08年123位とここ数年、その評価を落としていた。東洋経済CSR評価など非財務面の評価では低いことはあまりなかった同社だが、損失隠しのために使われた買収案件の巨額減損により、財務評価が悪化している。

オリンパスは例外としても、日本を代表する電気機器/精密の各企業の財務力が落ちていることは明らか。国内での過当競争、円高、海外メーカーの成長、震災、タイの洪水などさまざまな逆風が吹く中、今後、どのように業績を立て直していくかは喫緊の課題である。

さらに各業種のトップ企業も一覧にまとめた。全体的に大企業が多いが、繊維製品の帝国繊維(総合129位)、陸・海・空運/倉庫のエーアイティー(41位)、卸売業のグリムス(26位)、すでにご紹介したサービス業のディー・エヌ・エー(5位)は全体から見ると中堅企業でありながら各業界の首位となった。帝国繊維は現在の主力事業は消防ホースなど防災関連部門。創業時の事業を少しずつ変えていくことで業績を伸ばしている。

■業種別 上位100位・500位以内のシェアとトップ企業はこちら

今回のランキングは6回目となるが、1回目と比べると上位の顔ぶれがかなり変わっていることに気がつく。数年前まで優良企業の代表例だった自動車関連企業がリーマンショック後に大きく後退し、情報・通信業、サービス業などを中心に新しい企業が登場してきている。

■歴代の上位20位の企業はこちら

(財務・企業評価チーム 岸本吉浩 =東洋経済オンライン)

※『週刊東洋経済』12月17日号の特集「ガバナンス不全症候群」では、さまざまな視点から日本企業におけるガバナンス(企業統治)の問題を分析。本記事の「新・企業力ランキング」のほか、「社長の通信簿」など各種のデータやランキングも掲載している。


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