「今年は震災の影響もあり、初のマイナス成長になるかもしれない」(キリンビール)──。怒濤の勢いで成長してきた「第3のビール」が息切れしている。
年明け発表予定のビール大手5社による2011年のビール類総出荷量は7年連続で過去最低更新が確実。年々販売量を拡大し、ビール類に占める割合が3割を超えた第3のビールもついに減少に転じるとの見方が出ている。
国内メーカーが苦戦する背景にあるのが、韓国産を中心とする海外産格安ビールの台頭だ。08年ごろから国内商社と韓国メーカーが共同開発に乗り出し、09年には大手流通も相次ぎ韓国産の自主規格品(PB)販売を開始。国産品が120円(350ミリリットル缶)程度なのに対して、100円を切る韓国産が増えたことで市場に火がついた。最近では79円という激安品も登場し、低価格競争は激化している。
さらに、11月には韓国酒類最大手ハイトジンロも参戦。韓国産を中心とした輸入品のビール類におけるシェアはすでに9%に達するが、「今年は15%まで伸びる」と業界内では見られている。
国内では昨年来、キリンやアサヒビールが工場を相次ぎ閉鎖。対して11年のビール類輸入量は22万キロリットルに上る見込みで、中規模ビール工場の生産量に匹敵する。韓国産が伸び続ければ、国産品の販売量低迷によって国内生産の縮小が一段と加速しかねない。
韓国産取り込みに動いたメーカーもある。サントリーは9月から韓国製の輸入販売に着手し、近畿圏限定で試験販売を開始。だが、国内メーカーは「100円以下でビール類を販売しないよう国税庁から要請がある」(ビール酒造組合の荻原義晶氏)ため、価格は100円超。WHO(世界保健機関)が安売りへの規制を求める指針を出したこともあり、価格での勝負は難しい。