【産業天気図・電力】原発稼働再開は不透明、「土砂降り」続く最悪の景況感

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11年10月~12年3月 12年4月~12年9月

景気後退期に強い「ディフェンシブ銘柄」の代表格だった電力会社。だが東京電力福島第1原子力発電所の事故に端を発する嵐は当面去りそうにない。業界景況感は2012年度9月まで一貫して「土砂降り」が続きそうだ。原発事故の余波で、定期点検に入った原発の再稼働の見通しが立たないからだ。

9月時点で全国54基ある原発のうち、稼働してるのはわずか13基にまで減っている。このまま次々と各社の原発が定期点検に入り、再稼働できない状態が続くと、来春にはすべての原発が止まることとなる。電力会社は目下、再稼働に向けてストレステスト(耐性検査)を実施中。ただ、再稼働には1)経済産業省原子力安全・保安院の承認、2)首相や経済産業大臣など3閣僚の承認、3)地元自治体の了承--が必要で、早期再開は見込みにくい状況にある。

こうした中、各電力会社の収支先行きはまったく見えない状況にあり、今期については中部電力と原発を持たない沖縄電力以外は業績予想を非公表としている。仮に原発が少なくとも今2012年3月期中は稼働しないという前提を立てると、各社の業績は惨たんたる状況になるだろう。

まず、販売電力量を考えると、東京電力や東北電力では、事故や震災の影響で発電所自体が被災していることによる供給減と、夏場の電力制限令などによる需要減で大幅に下がる公算。その他の電力も節電志向や前期の猛暑反動などで、全般的に販売電力量は前期を下回る公算だ。

一方、費用面では前期より燃料費が大幅に増える見通しだ。原発の稼働減を埋め合わせるために、火力発電の稼働量を増やすことによる使用量拡大に加えて、原料価格が前期より高いという状況がある。足元円高という電力会社にとってはプラスの状況があるものの、「原料高を吸収できるほどではない」(中堅電力)。また、原料価格の上下によって電気料金を調整できる「燃料費調整制度」に応じて順次値上げを実施しているが、火力の構成費増にまつわる燃料費までは補いきれない。

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