出撃後ほぼ「全滅」日本海軍潜水艦の最大欠点 攻撃をかわす長時間潜航が可能な空調があったら…

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ちなみに酸素濃度が低下する問題もある。ただ、それに関しては当時の日本潜水艦も含めて高圧酸素タンクや酸素キャンドルで解決できていた。

第3は、対応ノウハウの確立と洗練である。日本潜水艦が沈んだ最大原因となった空調不備が改善すれば、生き残る潜水艦の数は一挙に増える。これは第1と第2として述べたとおりである。

それにより戦闘における教訓も多く持ち帰ることができるようになる。その結果、アメリカの駆逐艦への対応方法も進歩するため、生き残る潜水艦はさらに増えるのである。

これは相乗効果を生む。アメリカの駆逐艦との戦いで生き残る潜水艦が増えれば、ノウハウが増える。それにより生き残る潜水艦はさらに増える結果、ノウハウ集積も増加しその洗練も進むのである。

例えば、新兵器ヘッジホッグへの対応策も編み出せたかもしれない。ヘッジホッグとは、24発の対潜爆弾を、ほぼ同時に投射する兵器である。

爆弾は投網のように、正確には投網の錘石が環状に広がる形で海面に突入するため命中確率は高い。細かい理由は省くが、ソーナー探知ができなくなる欠点も解決した優秀兵器であった。

潜水艦の最大の過ち

日本はその存在にも気づかず、一方的に沈められた。海外雑誌に載った米英駆逐艦の写真にヘッジホッグがあったにもかかわらず気にもとめなかった。

その攻撃を切り抜ける潜水艦が増えれば、存在や概要はつかめるようになる。そうすればヘッジホッグ攻撃の対策法の芽も出てくるだろう。

空調改善により、日本潜水艦の沈没数は一挙に減少するのである。その効果は他の誤りを是正するよりも大きい。

潜水艦作戦の失敗とされる戦略運用しなかった誤り、多形式を整備した誤り、作戦指揮でひんぱんに命令した誤りを改めるよりも、効果的に沈没数を減らすことができる。

その点で、空調不備が日本潜水艦沈没の最大の原因と結論づけられる。

文谷 数重 軍事ライター

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もんたに すうちょう / Sucho Montani

1973年埼玉県生まれ。1997年3月早大卒、海自一般幹部候補生として入隊。施設幹部として総監部、施設庁、統幕、C4SC等で周辺対策、NBC防護等に従事。2012年3月早大大学院修了(修士)、同4月退職。現役当時から同人活動として海事系の評論を行う隅田金属を主催。ライターとして『軍事研究』、『丸』等に軍事、技術、歴史といった分野で活動

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