ユーロ圏分裂回避には「欧州財務相」が必要だ ヨーロッパはギリシャ問題から何を学んだか

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この場合、個別のユーロ予算の作成は避けられず、権限は国から超国家機関へと移行する。共通税とユーロ債が新たな財政構造の一部を担うとともに、欧州安定メカニズムにはソブリン債務危機に対処できる規模の債務償還基金を含めるべきだ。

同時に、2007年から2008年にかけての世界金融危機を契機に欧州連合(EU)が設立した銀行同盟(SRF)を、資本ベースの拡大と共通の預金保証スキーム確立によって強化するべきだ。

欧州財務省の創設が必要

これら全ては、超国家機関である欧州議会と欧州委の権限を大幅に拡大することが前提となる。委員会は投票によって選ばれた議長の下で、適切な統治機関となるべきだ。欧州財務省が創設され、その大臣がユーロ圏各国の財務相を召集するユーログループの議長を務める必要がある。欧州議会の特別総会はユーロ加盟国の代表で構成され、国会のように法律を制定したり、行政を管理する権限を持つべきなのだ。

こうした提案は、ユーロ懐疑派だけでなく多くの方面からの批判を招くだろう。だが、欧州がユーロ圏を起点に結束と国際的妥当性を維持するには、財政および政治の統合という対価を支払わねばならない。別の道として、恣意的ではないにせよ現在のルールを一貫性を欠いて強制し続ければ加盟国間の不和を招き、最終的には分裂を引き起こすことになるだろう。

週刊東洋経済9月5日号

ヤノス・パパントニウ (ギリシャ)革新政治研究センター代表

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1994年から2001年までギリシャの経済財務相。

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