ギリシャ、総選挙で安定政権はできるのか チプラス首相は辞任し賭けに出たが…

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8月20日、辞意を表明しオフィスを出るチプラス首相(ロイター/アフロ)

ギリシャのチプラス首相は20日、EUによる第三次支援プログラムが正式に開始したことを受け、辞任を表明した。

支援開始に先駆けて行われた議会採決では、与党議員の3分の1近くに相当する40名超が反対票や棄権票を投じるなど、緊縮受け入れを巡って連立与党内に亀裂が広がっていた。

チプラス首相は反対票を投じた閣僚を罷免したのに続き、内閣信任投票を通じて政権基盤を強化することを模索したが、支援融資の再開に必要な法案に賛成した親欧州派の野党勢もチプラス政権を信任しない方針を相次いで表明していた。内閣信任には投票した議員の過半数、かつ総議員の5分の2以上の賛成票が必要で、野党勢が協力しない限り、達成が危ぶまれていた。チプラス首相は議会の過半数を事実上掌握できなくなったことで、自ら解散カードを切ることを決意したようだ。

急進左派連合は高い支持で単独政権目指すが

各種の世論調査では、緊縮受け入れに政権が方針転換した後も、急進左派連合が大幅なリードを保っている。解散・総選挙で党内の反対派勢力を放逐するとともに、今後の議会運営で野党勢の協力を必要としない政権を発足することを目指している。

ギリシャ憲法では議会の召集から1年未満に首相が辞任する場合、議会の第1党から第3党までの党首が順に各3日間の猶予を与えられて「政権発足を目指すこととされている。

第1党「急進左派連合」の党首であるチプラス首相に現在の議会構成で政権を再発足する意向はないことから、第2党の「新民主主義 (ND)」と第3党「黄金の夜明け」の党首が順に政権発足に向けた検討を開始するが、両党ともに政権発足に必要な他党の協力が得られる見込みはない。

これらの協議が不調に終わった場合、大統領はすべての政党党首を集めて政権発足を協議するが、これも実現は困難とみられ、選挙管理内閣を組織したうえで、議会を解散して総選挙を行う手はずとなろう。総選挙は議会解散から30日以内に行われることとされ、9月20日の実施が有力視されている。

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