いまこそユーロ圏は財政統合に踏み出すべき すべての国がドイツのようにはなれない
ユーロは「ゴキブリホイホイ」か「監獄」か
クルーグマン・プリンストン大学教授は NYタイムズにおける自身のブログにおいて通貨ユーロを「a Roach Motel(ゴキブリホイホイ)」に例えている。重債務国をゴキブリと例えることが適切かどうかはさておき、一度加盟したら抜けられず、通貨安という手段も封じられて、金科玉条のごとく緊縮路線を強いられる現状を巧く表している。このほか「監獄」や「更生施設」といったような例えも耳にする。いずれの表現にしてもユーロ圏に残留する限り、少なからずドイツ色に染まらなければ延々と「宿題」が課されるという構造的な問題を捉えている。
ギリシャを無理やりドイツ色に染めようとした結果がチプラス政権という扱いにくい政権の誕生なのであり、ドイツの好む教条主義的な「宿題」を課す限り、今後、第2、第3のチプラス政権が出てくる可能性はある。ユーロ圏離脱が最善の選択であるかどうかは脇に置いたとしても、これまでとは違った処方箋が検討されて然るべきだろう。
この点、輸入関税と輸出補助金を組み合わせればユーロ圏を離脱させずに通貨下落と同様の経済効果が得られるという声もあるが、そのような離脱よりハードルが低く手を付けやすい弥縫策こそユーロ圏崩壊の「蟻の一穴」になる恐れがある。共通通貨圏に残留させるために関税・非関税障壁を容認するというのは本末転倒の極みだろう。
国内部門すべてが貯蓄超過というドイツ
今回のギリシャをめぐる騒動に関しては、2度の金融支援と民間債権者負担(PSI)まではさんでおきながら結局、債務返済に至らなかったギリシャが責められるべき立場にあることは間違いない。ギリシャは 2012年3月の PSIで発行済み国債を額面の 3割程度で新国債に交換し、同年 12月にはその新国債を額面以下の時価で買い戻すという債務調整を行っている。その上で、記憶に新しい 2015年6月30日には IMF融資 15億ユーロの返済期限を反故にした。格付け会社がどう判断したかどうかは脇に置いたとしても、実態としては 3年で 3回デフォルトしている。債権国の処方箋も万能ではなかっただろうが、ギリシャが最善の努力を果たしたかどうかはやはり疑義がある。
しかしながら、ドイツの振る舞いが EMU(経済通貨同盟)の盟主として相応しいものだったのかという点についても議論はあろう。その偏執的な緊縮主義は最終的に債権者側における内輪もめにまでつながっており、特に第3次金融支援合意直前に報じられたレンツィ伊首相の「ドイツにはこう言いたい。もうたくさんだ」といったコメントは印象に残った。
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