大国インドが中国のような独裁にならなかった訳 絶対的な強権支配が成立しにくかった土壌

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「ムスリムを差別している。ヒンドゥー至上主義だ」と非難されながらも、経済発展を実現させていますし、テクノロジーの発展にも尽力。たとえば銀行口座が持てなかった貧困層でも、スマホの生体認証で商売ができるようにしたことは、新たなビジネスを生んだと評価されています。

新時代の国際的リーダーとなり得るポテンシャル

もともとが多様なインドは、地理的には西洋でも東洋でもない元祖中庸の国。民族としてはアーリア系というヨーロッパ系とも近しい血もあれば、ドラヴィタ系の人もいます。宗教としては東洋系のヒンドゥー教、仏教の国。さらにウパニシャッドという最古の教えをもち、ゼロの概念を生み、量子力学にも通じるという哲学的な深みが底力となっています。

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私の個人的な経験を振り返っても、インド人の多くはコミュニケーション能力が抜群に高く、いわゆるマルチと言われる国際会議の場ではすぐに「場の中心」になります。あらゆる要素を内包しているためか、インドという国そのものが、国際社会で独自の立ち位置を確保しているのです。

「インドのポテンシャルを考えた場合、新時代の国際的リーダーになるんじゃないか」

この難しい国際情勢で「中国ともロシアとも、ほどほどに付き合いつつ近寄りすぎない」という巧みなスタンスを見ていると、新リーダー・インドも現実になりつつあると感じます。

ただし中国とはカシミールをめぐる国境問題がありますし、国内では格差と貧困が深刻です。インフラを整えようといってもトイレもない人々が未だいるのは、大きな課題といえます。女性首相も存在したとはいえジェンダー・ギャップ指数は低く、女性への性暴力もたびたび報道されているので、見聞きしている人も多いでしょう。また、先に述べた通り、モディ政権の政策でムスリムが権利を奪われるなど、宗教対立及び人道上の問題が深刻化しています。2024年6月に結果が出た総選挙では、モディ首相の率いるインド人民党は第一党を維持したものの、議席を減らしました。

そして人々は、国政を握る二大政党よりも地元の地域政党にシンパシーを感じることもあるように思います。

インドは投票しないことに罰則はないのですが、国政選挙でも州選挙でも60〜70%程度の投票率を誇ります。おそらく「政治がちゃんとしないと、自分たちの生活が困る!」という切実さを反映しているのでしょう。これからの世界で、インドがどう頭角を現していくか注目したいところです。

山中 俊之 神戸情報大学院大学 教授、国際教養作家、ファシリテーター

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やまなか としゆき / Toshiyuki Yamanaka

1968年兵庫県西宮市生まれ。東京大学法学部卒業後、1990年外務省入省。エジプト、英国、サウジアラビアへ赴任。対中東外交、地球環境問題などを担当。首相通訳(アラビア語)や国連総会を経験。2000年、株式会社日本総合研究所入社。2009年、稲盛和夫氏よりイナモリフェローに選出され、アメリカ・CSIS(戦略国際問題研究所)にてグローバルリーダーシップの研鑽を積む。2010年、グローバルダイナミクスを設立。累計で世界96カ国を訪問し先端企業から貧民街、博物館・美術館を徹底視察。ケンブリッジ大学大学院修士(開発学)。高野山大学大学院修士(仏教思想・比較宗教学)。ビジネス・ブレークスルー大学大学院MBA、大阪大学大学院国際公共政策博士

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