大国インドが中国のような独裁にならなかった訳 絶対的な強権支配が成立しにくかった土壌

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たとえばマウリヤ朝やグプタ朝がインドを統一しているようで実はいくつもの国に分かれていたり、イスラム王朝が13世紀初めから4世紀にもわたって支配しても南は支配下から外れていたり。ムガール帝国(1526〜1858年)の統一も英国によって統治権が制限されていました。

つまり、2000年にわたって巨大なインド文化圏・経済圏として繁栄しているにもかかわらず、言語・宗教・民族の違いが大きく、それゆえに絶対的な強権支配が成立しにくかった。この土壌があったからこそ、民主化しやすかったと感じます。

少数民族はいたものの漢字と儒教で価値観を統一した中国、スラブ民族が多数派でロシア正教があったロシアとは、成り立ちが異なるのです。

この多様性は、今のインドの政党に反映されています。地域政党も多く、「インドを知るには政党を知れ」と言えます。

民族、言語、宗教が政党に表れる

インドの主要な政党を見ていきましょう。まずは現在の与党であるモディ首相のインド人民党(BJP)。人民党は、モディ首相の出身州であるグジャラート州をはじめとした北部で根強い支持があります。北部はヒンディー語話者が多く、ヒンドゥー教を重視する同党の主張が受け入れられやすい面があるのです。

「インド人民党は、経済はグローバル志向ですが、政策的にはナショナリズムが強い……というか、ヒンドゥー教至上主義とも言われます」

もしも私がインド人民党の人の前でこう説明したら、激しく否定されると思います。実際、2023年に訪米したモディ首相はジャーナリストからイスラム教弾圧を指摘され、「我々は民主主義国家であり、そんなことはあり得ない」と啖呵を切っていました。

モディ首相が断言するのは政治家として当然で、インドの憲法は世俗主義の原則に基づき、宗教と政治を切り離すように定めています。しかしインド人民党はヒンドゥー教に優しくイスラム教に厳しいのは事実ですし、他の政党も宗教の影響は多分に受けています。

たとえばモディ首相の政策で、社会的活動を行う多くのNGOが解散を命じられています。解散の理由の一つは、宗教。キリスト教やイスラム教がバックにある場合は、免許取り消し・解散になることが増えています(Economist2024年2月24日―3月1日)。

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