アメリカで内戦起きる?不安渦巻く恐ろしい光景 『シビル・ウォー アメリカ最後の日』製作背景

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そんな中、国際写真家集団「マグナム・フォト」に所属する著名な戦場カメラマンのリー・スミス(キルステン・ダンスト)と、記者のジョエル(ワグネル・モウラ)は、西部勢力がワシントンD.C.を制圧する前に、14カ月にわたって取材を受けてこなかった大統領への独占インタビューを敢行しようと計画する。

ワシントンD.C.までの距離は1389キロメートル。そこにリーの師匠であるベテラン記者のサミー(スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン)、そしてリーにあこがれる若手カメラマンのジェシー・カレン(ケイリー・スピーニー)も同行することとなり、西部勢力の軍事基地があるシャーロッツビルまで向かうこととなった。

シビル・ウォー アメリカ最後の日
若手カメラマンのジェシーを演じたケイリー・スピーニー。本作での共演をきっかけに、主演のキルステン・ダンストが友人のソフィア・コッポラにスピーニーを紹介。その結果、コッポラ監督の最新作『プリシラ』で主人公を演じることとなった。ⓒ2023 Miller Avenue Rights LLC; IPR.VC Fund II KY. All Rights Reserved.

だがその道筋で彼らが目撃したのは内戦の恐怖と狂気が支配する世界だった。誰が敵で、味方なのかもわからず、ただ目の前の敵を撃ち殺す。平穏な日常は失われ、荒廃した景色が広がっていた。

旅の途中で彼らは、民間人の遺体を処理する残虐な武装集団と遭遇する。そこにいた男(ジェシー・プレモンス)は、報道陣であろうが容赦なく銃を突きつけてきて、引き金を引くことに躊躇はない。

命の危険を感じたジョエルは「これは何かの間違いだ。俺たちは“同じアメリカ人”じゃないか」と説得を試みるが、男は「オーケー、お前が言うアメリカ人ってのは“どの種類のアメリカ人”なんだ?」と問いかける――。果たして彼らはこの分断が進む戦場を無事に生き抜いて、大統領への単独インタビューをスクープすることができるのだろうか?

「ありえるかもしれない未来」を描く

本作の監督・脚本を務めたのはイギリスの鬼才アレックス・ガーランド。小説家としてキャリアをスタートした彼は、小説「ザ・ビーチ」がレオナルド・ディカプリオ主演で映画化された。その後は脚本家に転向し、『28日後...』『わたしを離さないで』など数多くの作品を手掛けた。

そして2015年の『エクス・マキナ』で監督デビューを果たすと、『アナイアレイション-全滅領域-』『MEN 同じ顔の男たち』など独創的な世界観の作品を次々と発表してきた。

ガーランド監督が本作の脚本を書き始めたのは2020年。コロナ禍のまっただ中だった。それまでの日常が一変し、世界が混沌としていく中で「世界の分断が明確化されている」ように感じたというガーランド監督は、怒りと不安、恐怖が入り交じった状態の中で脚本を書き続け、「脚本を書く中で感じたフラストレーションは収まるどころか、次第に大きくなっていった」。そこから生まれたものは架空の物語ではあるが、“ありえるかもしれない未来”としてわれわれに警鐘を鳴らしている。

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