アメリカで内戦起きる?不安渦巻く恐ろしい光景 『シビル・ウォー アメリカ最後の日』製作背景
劇中で戦場カメラマンとして登場するリー・スミスと、ジェシー・カレンという名前は、ガーランド監督が尊敬するふたりの戦場カメラマン、リー・ミラーと、ドン・マッカランにちなんで名付けられた。
ちなみに余談だが、このふたりを題材とした映画が今後予定されていて、ひとつはリー・ミラーを題材としたケイト・ウィンスレット主演の伝記映画『Lee(原題)』で、今年9月にアメリカやヨーロッパなどで劇場公開予定。
もう一本はドン・マッカランを題材とした伝記映画『Unreasonable Behaviour(原題)』で、女優のアンジェリーナ・ジョリーがメガホンをとることがアナウンスされている。
アメリカ国内では物議も醸した
くしくも11月のアメリカ大統領選にトランプ前大統領が共和党からの出馬を表明。かつて2021年1月6日にはトランプ支持者によるアメリカ連邦議会議事堂襲撃事件が起きたが、もし第2期トランプ政権が実現した場合、任期終了後もアメリカ憲法修正第22条を順守せずにその権力の座に居座るのではないかという懸念を抱く人たちもいる。
またウクライナや、パレスチナ自治区ガザ地区などで起きている戦争も、アメリカの動向が大きなカギを握っているが、いずれも終息の気配は見出せず。世界の分断はさらに進んでいる。そんなタイミングもあり、11月に大統領選挙を控えるアメリカ国内では、本作の内容が物議を醸した。
とはいえ、本作はトランプ前大統領をはじめとした特定の誰かを想定して描いているわけではなく、むしろその描き方において、イデオロギー色は極力排除されている。
劇中では、テキサス州とカリフォルニア州が手を組んで大統領に反旗をひるがえすという設定となっているが、保守的な共和党支持者が多数を占めるテキサス州と、リベラルな民主党支持者が多数を占めるカリフォルニア州が手を組むというのは、なかなかありえない状況ではある。
だが海外メディアのインタビューで「この映画で大切なのは、政治的に相違のある州が手を組んで、ファシズム的な大統領に、意義を唱えたということだ。右とか左とか偏った思考は会話を拒絶してしまう。それが分断の問題だ」と語っていたガーランド監督。
これは決してアメリカだけに限られた特定の物語ではなく、世界各国どこででも起きる可能性があるような描き方になっている。
実際、アメリカ公開時に行われた出口調査では、チケットを買った人たちの中で保守派、リベラル派の割合は半々。レッドステート(共和党支持者が多い州)、ブルーステート(民主党支持者が多い州)ともに本作の興行が好調であった、とも報じられていた。
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