アメリカで内戦起きる?不安渦巻く恐ろしい光景 『シビル・ウォー アメリカ最後の日』製作背景

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政治風刺漫画家である父を持ち、その友人のジャーナリストに囲まれて成長してきたというガーランド監督は、ジャーナリストを題材とした映画をつくりたいと思ってきたが、友人の映画製作者からは「やめとけ、ジャーナリストは嫌われてるぞ」と止められたという。

だが「人間にとって医者が必要であるのと同じように、政治を暴走させないためにもジャーナリストは必要だ」と語るガーランド監督。

腐敗した政治家によってジャーナリズムが矮小化されていることに対する憂慮もあったようで、「強い偏向報道を行う報道機関があった場合、その報道機関は一部の人にしか信頼されず、他の人からは不信感を抱かれるだろう。だがかつてのジャーナリストたちはそれを意図的に排除するようにしてきた。そしてこの映画はそうした古いタイプのジャーナリズムへの回帰である」とインタビューで語っている。

戦場に放り込まれたかのような臨場感

ガーランド監督は本作を、生々しい恐怖を抱かせる明確な反戦映画にしたかったという。その効果をもたらす要因のひとつとして、迫力ある音響デザインが挙げられる。

「可能な限り強烈な閃光と発射音が出る空砲をつかった」というガーランド監督。そのことがもたらす銃の音の大きさ、気圧の変化などによって、まるで自分がたたかれているかのような感覚につながり、少しひるんだり、少し遠ざかったりといった具合に、俳優の演技にもリアリティをもたらした。リー役のダンストは「特に建物の中にいるときはとてもうるさかった。ヘアメークのトレーラーはかなり離れているのに、ある爆発のシーンではトレーラー全体が揺れたんです」とその撮影のすざましさを証言している。

まるで戦場のまっただ中に放り込まれたような圧倒的な臨場感をもたらす本作。現実世界が不穏な空気に包まれている今だからこそ注目したい一本だ。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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