そんな彼女が、2024年選挙でも予備選を戦うことなく、いきなり大統領候補の座が回ってきた。よほど「もってる」人なのであろう。それでも大統領選のステージに上げてみたところ、急にスター性が開花した。そこで民主党員は、久々に候補者と恋に落ちているという次第である。
何より彼女は明るい。そしてよく笑う。バイデン氏81歳対トランプ氏78歳という構図に辟易していた向きには、59歳という年齢だけでホッとするものがある。
「女性初の大統領を目指す」、というモチベーションも健在だ。特に人工妊娠中絶の問題で、保守化した最高裁に怒っている女性は多い。黒人でアジア系でもある、という複雑なアイデンティティも、いかにも21世紀の候補者という感じではないか。元検察官が有罪判決を受けた犯罪者・トランプに立ち向かう、という構図がまた民主党支持者を高揚させる。
「決めぜりふ」やウォルズ副大統領候補も大きなプラス
しかもここへきて、初めて民主党には「決めぜりふ」が生まれた。それは彼女が多用する”We are not going back.”(私たちは後戻りしない)というフレーズだ。これを聞いた後に、トランプさんの”Make America Great Again”(アメリカを再び偉大な国に)という言葉を思い浮かべると、なんとも時代錯誤的に思えてくる。すなわち民主党は前向きで明るい政党、共和党は後ろ向きで暗い政党、という対比になるわけだ。
みずからの「伴走者」”Running Mate”として選んだ副大統領候補、ティム・ウォルズ氏がまたいい味を出している。この人、ハリスさんと同じ1964年生まれなのだが、「見た目年齢」が上なものだから、まるでハリスさんの保護者か何かに見えてしまう。
経歴を見ると、陸軍、高校教師、アメフトコーチとある。陸軍だって「上がり」ポストが「曹長」とあるから、さほど出世したわけではない(ちなみに勲章はたくさんもらっている)。それが地域のボランティアとして皆に愛され、ついには下院議員を6期も務め、ミネソタ州知事になったという叩き上げの人物なのである。
いかにも「アメリカのお父さん」というノリの庶民派で、それに比べれば、共和党副大統領候補のJ.D.ヴァンス上院議員はイエール大卒のインテリである。焦点となる白人ブルーカラー層の票を取りに行くには、ウォルズ氏のほうが有利なんじゃないだろうか。
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