ユーザーの声を数だけたくさん集めても、そこから出てくる示唆は、誰でも想像できるような無難なものになりがちだ。また、作り手側の世界にどっぷりつかって買い手側の気持ちがわからなくなってきた業界人がいくら議論しても、せいぜい、少し新しく、少しおしゃれだけれど、「買っても買わなくても、どちらでもいい」商品しか生まれない。
「よそ者」だからこそ、業界の常識に縛られない
お客様から「これが欲しい!」と思ってもらえる商品を作るには、お客様を見定め、その人が「欲しい」と思うものを聞き出し、製品化するのが近道だ。そして今回のケースでは、まさに私は「想定顧客」だから、私が「欲しい」と思うものを作ることは正しい。
もちろん、社長なら誰でも好きな商品を作ってよいと言っているわけではない。ユーザーの視点を持っていて、業界の常識に染まっていない社長に限った話である。
私がハイアール アジアのCEOに就任したのは昨年1月だ。それまで家電業界と無縁だった「よそ者」の私だから、ユーザー目線で業界の常識に縛られずに考えることができるのだ。
これは、大きな強みである。家電業界の素人である私が、旧三洋電機を母体とする巨大家電メーカーのトップとして招かれたのは、それまで、ほかの業界で数多くの企業を再建させてきたという実績があるからである。ではなぜ、さまざまな異なる業界で、その業界のベテランたちができなかったことを成し遂げられたのかというと、逆説的だが、つねに「よそ者」だからだ。
私は約3年置きに、異なる業界に転職し続けている。このことをもって、「この人は、1カ所に腰を据えることができない人だ」と言われることもある。実際にあるヘッドハンターの方からは、「こんなにコロコロ会社を変える人に大きな仕事は任せられない」と言われたこともある。しかし、私はそうは思わない。
まず、そもそもビジネスパーソンは本来、何かを成し遂げるためにその職場にいるべきであり、それを成し遂げたならば、その場に居続ける必要はないはずだからだ。もう一歩踏みこんで言うと、実績を上げた職場に居続けることは、居心地のよいコンフォートゾーンにとどまり続けることだとも考えられる。自らの成長を目指すのであれば、むしろ周期的にまったく別の世界に飛び込むことが正解ではないだろうか。
そして、つねに異業界に飛び込むということは、「いつも素人」「いつも初心者」になるわけだが、そのことは決してマイナス要因ではなく、むしろプラス要因であることは、すでにおわかりいただけたのではないだろうか。
「なぜ、そんなに業界が変わっても、いつも成果を出せるのですか?」と聞かれることがあるが、むしろ逆である。毎回、業界を変えてきたから、出せる成果も大きくなってきたのだ。
みなさんに、この言葉を贈りたい。
「世界を変えるのはいつだって、よそ者、若者、バカ者だ」
(撮影:大澤 誠)
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