MBAを取得した人が、その後、必ずビジネスで成果を出すとは限らないことは、皆さんも薄々気づいているだろう。企業でそれなりの仕事をしてきたビジネスパーソンが、高い学費を払って世界的に有名な教授の授業を受けて卒業したにもかかわらず、企業に戻ってみると、どうもその成長の跡がうかがえない。立派な肩書きがひとつ増えただけ。そういう方は残念ながら一定数いるようだ(私感だが、特に日本人に多い)。
もちろん、MBAを取得後に、一皮も二皮もむけて、ビジネスリーダーとして飛躍する方がほとんどなのだが、いったい、両者の差はどこで生まれるのだろうか。
今でも夢でうなされるMBA時代の苦難
言うまでもなく、MBAは楽に取得できるものではない。私が留学したのはサンダーバード国際経営大学院だが、当時の厳しさは今でも忘れられない。
授業では、経営者の経験なんてないのに「お前が経営者だったとして、なぜこれがこうなったのかを説明しろ」と当てられる。とっさにロジックを組み立てて説明できなければ「ダメなやつ」の烙印を押される。
自信がなさそうな生徒ほど無慈悲に当ててくる「コールドコール(冷たいコール)」は、学生にとって恐怖そのものだった。しかも、枕のように分厚い本を「明日までに読んでこい」と宿題として課される。寝る時間どころか、飯を食う時間もない。もちろん、成績が悪ければ退学だ。しかもライバルは皆、優秀である。一流企業の幹部候補生たちが、狭き門をくぐってきているのだから当然だ。
私は、経営者となった今も毎日が大変ではあるが、それでも、あのときの大変さに比べれば、まだマシだと思っている。実は今でも、レポートの提出が間に合わずに窮地に立たされる夢を見てうなされ、妻に「大丈夫?」と起こされることがあるほどだ。
さて、こうした過酷な授業や宿題を経て、頭の中にたたき込まれるMBAの知識であるが、誤解を恐れずに言うと、実はその知識自体にはあまり価値がない。いかに最高峰の教育環境で、最先端の事例を学ぼうとも、MBAで学べる知識なんて、鮮度は2年から3年だ。
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