MBAを持っている人がいたら、いつ卒業したのかを聞いてみるといい。「1998年」なんていう人は、そのときに勉強したケーススタディも古びている。「IBMについて学んだよ」と言われても、その後、IBMが何度苦境に陥ったかを考えると、当時のケースが今、役に立つとは思えない。
では、学ぶ知識にあまり価値がないとすると、MBAでは何を学ぶべきなのか?
学校トップの就職内定数を獲得した秘策
MBAで本当に学ぶべきことは、厳しい環境の中で戦う術であり、姿勢である。これは教授から教わるものでも、教科書を読んで学ぶことでもない。自分で考え、体得することだ。
たとえば教授からのコールドコール。自信のなさそうな生徒ほど当てられることがわかった私は、たとえ準備がまったくできていなくても、「当ててみろよ」と言わんばかりの雰囲気を醸し出して自信ありげに座る習慣を身に付けた。もちろん当てられたら即死だから心臓バクバクだが、そんな表情は露ほども見せない。
教授に対してだけではない。ライバルである生徒たちとの戦い方も身に付けた。MBA留学生にとっては、卒業後に希望の企業に就職できるか否かが究極の勝敗となるのだが、その最初の関門がインターンシップである。これに呼ばれると、そのまま採用の声がかかる可能性が高まるからだ。インターンシップ後、私は13社から内定をいただいた。ひとつのオファーもない学生がいる中で、この数は学校でトップだった。なぜこんなことが可能なのか?
成績が優秀であるとか、学内プロジェクトを成功させるとか、それだけではライバルたちと差別化することはできない。私は入学時から、彼らを出し抜いてトップに立つためには何が必要かをひたすら考え、ひとつのことに気づき、実践した。みんなが2年生になってから始める就職活動を、1年生のときから始めたのだ。
入学して間もない学生が就職活動をするなんて前代未聞だ。リクルートメントオフィスの担当者も「時間の無駄だからやめなさい」と忠告した。実際、その年の就職活動では1社のオファーももらえなかった。
だがこの経験は2年生になってから生きる。ほかのライバルたちが初めて体験する就職活動を、すでに私は何十回もこなしているのだから、面接もレジュメも完璧だ。
授業でハッタリをかます。ライバルを出し抜く。これらが学業の本分かどうかは、私にもわからない。しかし、MBAで学ぶべき大事なことは、こういうことではないだろうか。
考えてみてほしい。ビジネスの勝敗は、知識では決まらない。ポーカーフェースができて、駆け引きができて、常識を覆して、ときにはケンカができてこそ、世界で戦える本物のビジネスパーソンである。そしてMBAという環境は、実は学校の外のビジネスの世界とまったく同じであり、極限状態の中で優秀なライバルたちとし烈な競争を強いられる、人工的な「プレッシャーポット(圧力鍋)」なのだ。
MBAを「プレッシャーポット」だと理解したうえで、この中で戦う術や姿勢を身につけて卒業するか、あるいは要領よくペーパーテストや論文の点数を稼いで卒業するか。それによって、MBA取得後の、その人のパフォーマンスには天と地ほどの違いが出る。
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