しかし、いち早くDXを推進してきたにもかかわらず、いまだに「目に見える効果」が出ていない企業が多いという現状があります。すでに数百億円を超える投資をしている企業も多く、その悩みは深刻です。
なぜ「守りのDX」の効果を享受できていないのでしょうか。
それを読み解くには「業務効率化によるコスト削減の効果算定」を理解しておく必要があります。
「DX効果算定」のまやかし、その実態は?
業務効率化によるコスト削減の効果算定といっても、実はそれほど難しいものではありません。
みなさんも、「年間100万時間(500人分)の業務効率化を実現」「50億円相当のコスト削減を達成」などといった記事をよく目にすることがあるでしょう。これらの数字は、次のような数式で導き出すことができます。
守りのDXによる削減時間=ある業務1件あたりの削減時間 × その業務の処理件数
たとえば、伝票ひとつの処理時間を10分削減し、対象となる伝票が月に1万件だった場合は、
といった具合に1カ月分の削減時間が弾き出せます。
こうして、対象となる全業務分を積み上げた数字が、「守りのDX」による効果、つまり「総削減時間」ということになります。
この時間を年間の稼働時間の2000時間(250日×8時間)で割れば「何人分」の数値となります。その数値に1人当たりの雇用コストを掛ければ「コスト削減額」となります。
しかしこの算定は、しばしば意思決定をミスリードすることがあります。
例えば「年間100万時間(500人分)の業務効率化を実現」は、大手金融機関の実際のケースです。
100万時間はたしかに大きな数字でしょう。ただし、ここでひとつ注意が必要なのは、この大手金融機関は「4万人の従業員を擁している」という点です。
つまり、年間の100万時間を4万人で割り、さらに年間稼働日250日で割ると、「1人当たり1日わずか6分の削減」……ということになります。
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