新手のVCは、UberではなくHertzに出資する 冴えないライバル企業に注目

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投資対象はITと健康医療部門で、イノベーションを求める買い手に買収されそうな上場企業だ。非上場企業の評価額のバブルは、企業買収を刺激する要因のひとつにすぎない。

設立から22カ月で、投資先のうち7社の買収が決まっている。そのなかには、クラウド型マーケティングソフトを開発するレスポンス(オラクルが買収)や、データ統合ソフト開発のインフォマティカ(イギリスの未公開株投資会社ペルミラとカナダ年金計画投資員会が買収)もある。

忍耐が必要な戦略

ピア88によると、今年前半の運用実績は8.9%。業界の基準のひとつであるHFRIテクノロジー/ヘルスケア・ヘッドファンド・インデックスは、同時期に9.1%まで上昇している。創業時からの通算の運用実績は19.4%で、同時期のS&P500指数は22.7%だ。

ただし、ピア88の投資戦略は忍耐が必要だ。保有株が値上がりするか、買収されるまでに時間がかかる。創業当初に資金を託した投資家は3年間、待つことに同意した。ピア88は彼らから、管理手数料と成功報酬(運用益の10%)を取っていない。

ピア88は、ジャイブとパンドラの株式も保有している。企業向けのグループウエアを提供するジャイブの時価総額は2億9200万ドルで、急成長中のライバルで非上場のスラックの企業価値は28億ドルだ。音楽ストリーミング配信大手のパンドラの時価総額は38億ドル。非上場のライバル、スポティファイの評価額85億ドルの半分にも満たない。

「これらの会社はライバルの非上場企業とそっくりではないが、似たような環境のなかから、さまざまな会社にとって有益な資産をさがしている」と、ティモンズは言う。「パンドラは、メディアやインターネット企業の買収先としてぴったりだろう。ジャイブは大手企業にとって吸収合併しやすいし、バランスシート上は巨額のキャッシュを持っているから、大手の非上場企業が狙うことも考えられる」。

(執筆:KATIE BENNER、翻訳:矢羽野薫)

© 2015 New York Times News Service

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