「311 失われた街」展--東日本大震災で被災した14地域の復元模型と震災関連データで「街」への追悼を表現
東日本大地震から8カ月。被災地では震災の傷跡を残しながらも、復旧・復興への精力的な努力が続けられている。家や建造物の設計、街づくりに携わってきた建築家にとって、今ほどその力や役割が問われる時代はないだろう。ただ、震災による壊滅的な被害を、職業観を問われる大きな衝撃として受け止めている建築家も多い。
そうした建築家の視点から、被災地の地域や街に何が起き、何が失われたのか、その事実を客観的に表現することで復興への道のりを考える、という趣旨の展覧会が「TOTOギャラリー・間(ま)」(東京・港区)で開催中だ(~12月24日まで)。
展覧会では、大震災の破壊的な揺れや大津波によって大きく姿を変えた岩手、宮城、福島の14地域の街並みを、実際の500分の1のサイズの白い模型(=1平方メートル)で精巧に復元。航空写真で撮影した地震前後の同じエリアの写真などの参考情報とともに均等に並べられている。
また、同じ会場内では、被害の影響を客観的に伝えるために、震度、津波、放射線量、電力量の4つのデータをビジュアル化した「311 SCALE(サンイチイチスケール)」も同時展示されている。
模型化されたのは、岩手県の野田(九戸郡野田村)、田老(宮古市)、大船渡(大船渡市)、陸前高田(陸前高田市)、宮城県の鹿折(気仙沼市)、弁天町(同)、志津川(南三陸町)、女川(牝鹿郡女川町)、牝鹿半島(石巻市)、石巻(同)、荒浜(仙台市若林区)、福島県の相馬港(相馬市)、浪江(双葉郡浪江町)の14街区。いずれも震災や津波、その後の原発事故などで大きな被害を受け、多くの住民が避難を強いられた地域だ。
戸建ての民家の並ぶ住宅地や湾岸の漁港、高速道路が取り巻く工業地帯など、復元された街の表情は一様ではない。複数の模型を比べながら俯瞰することで、震災の規模の大きさが改めて実感させられる。また、個々の模型を接視すれば、細やかに再現された住宅地の路地や庭、運動場、沖に浮かぶ船などの姿から、かつてそこにあった何気ない日常の息づかいが浮かび上がるようでもある。