ショック・ドクトリン〈上・下〉 惨事便乗型資本主義の正体を暴く ナオミ・クライン著/幾島幸子、村上由見子訳 ~ネオリベラリズムがもたらした荒涼たる世界

ショック・ドクトリン〈上・下〉 惨事便乗型資本主義の正体を暴く ナオミ・クライン著/幾島幸子、村上由見子訳 ~ネオリベラリズムがもたらした荒涼たる世界

評者 中岡 望 東洋英和女学院大学教授

本書は2007年に出版され、欧米で話題になった本である。その後もネオリベラリズム(新自由主義)に対する批判の書として頻繁に引用され、現在ではリベラル派のバイブル的な本になっている。1980年代以降、世界は急速にネオリベラリズムに傾斜してきた。本書は、ショック・ドクトリンという概念を使って、ネオリベラリズムがいかに世界を席巻してきたかを分析したものである。

著者は、「ショック・ドクトリンというレンズを通すと、過去35年間の世界の動きもまったく違ったものに見える。この間に世界各地で起きた数々の忌まわしい人権侵害は、とかく非民主的な政権による残酷行為だと片づけられてきたが、実のところその裏には、自由市場の過激な『改革』を導入する環境を整えるために一般大衆を恐怖に陥れようとする巧妙な意図が隠されていた」と指摘する。

本書は70年代のチリの軍事政権の分析から始まる。最初の“ショック療法”は、ノーベル経済学賞受賞者のミルトン・フリードマンと彼が率いるシカゴ学派の経済学者たちが同軍事政権にインフレ対策として勧めた、急激な経済と貿易の自由化という“ショック療法”だ。シカゴ学派が主張した“ショック療法”は、急激な自由化というショックによって消費者や企業の行動に影響を与えることを狙ったものであった。さらにシカゴ大学で薫陶を受けた多くの経済学者が世界銀行やIMFを舞台にネオリベラリズムの発想に基づいたグローバリゼーションを強力に促進していく。南米からアジア、東欧、中東へとネオリベラリズムが浸透していく。

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