菅田将暉主演「転売ヤー」を襲う"ネット社会の闇" 「Cloud クラウド」が描く見えない悪意の暴走
しかし楽をして儲けたいと思い、“転売ヤー”をはじめたはずなのに、生活は全然楽にもならず、儲かりもしない。転売のノウハウを教えてもらった先輩の村岡(窪田正孝)は「いつからこうなっちまったんだろうな……」とつぶやくが、果たして吉井の心にその言葉が響いていたのか。
そんなある日、工場の社長・滝本(荒川良々)は吉井に昇進の話を持ちかける。「吉井くんほどの才覚と忠誠心があれば、管理職として十分やっていけるよ」。
滝本の期待とは裏腹に、彼は滝本に工場を辞めることを告げる。意表を突かれた滝本は吉井にこう諭す。「それはきっと若さからくる射幸心ってやつじゃないかな。それは人よりしあわせになりたいと闇雲に願う欲望のことだ。それも大抵は、よせばいいのに危ない賭けに出て、あっという間に破滅してしまう。キミはそうなりたいのか?」。
だがもっと金を稼ぐために「生活を変える」と決めた吉井は、恋人の秋子(古川琴音)とともに、自宅兼事務所として安く借りることができた湖畔の立派な家に引っ越すことにする。
そこで転売作業を手伝ってくれる地元の若者・佐野(奥平大兼)をバイトとして雇い、新たな生活を始める。
平穏な暮らしは長くは続かなかった。吉井の家に、自動車の部品が窓に向かって投げ込まれ、ガラスが割られるという事件が起きたのだ。誰かのいたずらか? それとも――? そうやって知らず知らずのうちに吉井に向けられた悪意が、ジワジワと生活に侵食していくのだが――。
本格的なアクションをやりたかった
本作の企画は、「次は本格的なアクションをやりたい」という黒沢監督の思いが発端となった。
ヤクザや警察が派手な銃撃戦を行うようなスタイリッシュなものではなく、「およそ暴力沙汰とは縁がないような人たちが、最終的には殺すか殺されるかの、のっぴきならない状況を引き起こしてしまう物語」としてのアクション映画である。
それはけっしてスマートでカッコいいアクションではないが、現代社会のリアリティを反映したアクションになるはずだ。
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