韓国「40代独身女性の共同生活」に支持集まる理由 韓国の非婚化が問う「社会制度の家族問題」
互いに、もしくは誰とも恋愛関係にないキムとファンは、家族の概念を再定義することが解決策になると考えている。2019年(邦訳は2021年)に出版された著書『女ふたり、暮らしています。』はベストセラーとなり、これに続いて毎週配信するようになったポッドキャスト「Two Women Talk Together(女ふたり、話しています)」は数十万人のリスナーを集め、結婚とは違う共同生活によって伝統的な家族構造に異議を唱えている韓国人、中でも女性たちの声を代弁する存在になっている。
韓国では法律上、家族には配偶者、両親、子どもしか含めることができない。とはいえ、住宅費や教育費が急騰したことで、今では全世帯の約42%が1人世帯となっている。
「DIY家族」という選択肢
キムとファンは自分たちのことを「DIY家族」と呼ぶ。2人の生き方は、独身も典型的な韓国の家庭も望まない女性たちにとって1つの選択肢となっている。韓国の典型的な家庭では、夫婦がともにフルタイムで働いている場合でも、夫は1日に54分しか家事をしないのに、妻は3時間以上も家事に費やすことになる。
「私たちは独身の自由と共同生活のメリットを組み合わせたのです」とキムは言う。
韓国では伝統的に、「賢い母、良き妻」となることが女性の義務とされていた。ファンは若かった頃、「天気について話すのと同じくらい気軽」に既婚か未婚かを尋ねられたという。中年女性は今でも、婚姻状況や子どもの有無に関係なく、子どもがいる女性や妻に使われる「オモニム(お母様)」や「サモニム(奥様)」といった尊敬語で呼ばれるのが普通だ。
ファンとキムの著書には、互いの違いを抱えながら、2人がどう一緒に暮らしているかが描かれている。2016年に共同で購入したアパートにファンが引っ越してきたとき、ミニマリストのキムは、ファンの「自然災害級」の量の衣服や持ち物を目の当たりにして息をのんだ。