グーグルは「アルファベット化」でこう変わる エンジニアの「自由の王国」を守れるか

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その後もグーグルの顔となるプロジェクトはこの制度から生まれている。大きな製品を作るプロジェクトだけでなく、細かいインターフェイスや機能の改善を含め、エンジニアのアイデアでチャレンジできる環境が、グーグルらしさであり、大当たりするサービスを生み出す場を作り出してきた。

しかし、2013年頃から、20%ルールの形骸化が語られるようになった。

グーグルの認知とサービスの充実が図られ、驚かせるような新しいサービスではなく、既存製品の向上と収益化の拡大が求められるようになった。これはグーグルがやんちゃなベンチャーから、インターネットの重鎮の座を勝ち取った歴史そのものでもある。

グーグルのエンジニアに話を聞くと、環境の良さに対して、「終わりのないベータ版への疲弊」の声も少なくない。製品を改善し続ける必要性を理解しているからこそ、完成版がない途方もない世界に、目標を失うこともあるという。

あるいは、ゼロから作り出したプロダクトが一定の成果を上げても、好奇心と逆行する可能性がある。手を動かすのが好きだったエンジニアも、チームが拡大してくると、管理職としての役割を求められるようになる。プロダクトへの愛とは裏腹に、モチベーションが低下し、企業を離れることを考えるようになる。

Alphabetで、再びイノベーションを活力に

20%ルールを象徴するように、自由な発想でトライ&エラーを繰り返しながら成長してきたグーグルの姿は既に過去のものとなっており、盤石さ、確実さがより求められるようになった。

だからこそ、Alphabetの設立と、グーグルからの実験的なプロジェクトの切り離しを行い、エンジニアが再び、自由な発想で新たなアイデアを試す場を用意した。

グーグルのイノベーションの方法を再現する最良の方法が、Alphabetだったのだろう。ただし、企業の性格は、そう簡単に変わるものではない。過去に成功した「らしさ」「良さ」を、再び生かせる環境を丁寧に用意できるかどうかが、今後のカギだ。

ラリー・ペイジ氏は書簡の中で、Alphabetの意味について、投資における期待以上のリターンを意味する「アルファ」と、賭を意味する「ベット」だと説明している。AからZまでの企業のなかで、Gを意味するグーグルのような成長を遂げる企業が1つでも生まれれば、Alphabetは成功したと言えるだろう。

さらに、10年、20年、50年かけて、業界を支配するアルファベットの頭文字が増えていくなら、Alphabetは人類にとっての偉大な発明品となるかもしれない。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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