テレビ局が夏に社屋イベントを開催するワケ 5年後の東京オリンピック開催を視野に
テレビ局の夏イベントは、「放送番組の宣伝」、「街のにぎわいの創出」「テレビ広告収入拡大のための顧客(スポンサー)サービス」「イベント事業の収益拡大」という、複合的な要素を持っている。どの部分に力を入れるかは各局さまざまだが、各局の取り組みを見ればわかるように、基本的にはテレビ局の「ブランディング」、番組の「ファン作り」の意味合いが強い。
夏イベント開催当初から有料化施策に積極的なフジテレビは、唯一、入場料としてパスポート一般2000円を徴収する有料エリアがあり、BtoCビジネスとしてイベント事業を成立させている。ただし収支は「若干の赤字」(齋藤氏)。だが、27時間テレビのバンジー企画などのように、番組収録に用いることでアトラクションにかかる費用は、番組のセットと見なされ番組制作費という計上になることもあるようだ。ドラマ『恋仲』のアトラクションで20分程度並んで待つ間、次週の予告編が流れ並んでいる客の話題となるなど、「番組宣伝の機能があれだけ充実していて数億円の赤字なら、宣伝費用として考えると格安だ」(広告代理店社員)。
後を追うテレビ朝日は「気軽にふらっと何度でも立ち寄ってもらえる夏祭りにしたい」(総合編成局編成戦略部長の赤津一彦氏)という考えや、有料エリアを作りづらい立地的な問題を勘案しながら、有料化施策として「サマパス」を販売している。
サマパスは、六本木ヒルズ森タワー52階の展望台を会場にした「ももいろクローバーZ」の展示イベントへの入場や、本社屋横に設置されたステージで行われる『仮面ライダードライブ』『手裏剣戦隊ニンニンジャー』など、ヒーローショーや音楽ライブへの優先入場などの特典が付いて一般2000円。六本木ヒルズ展望台の通常の入場料が一般1800円のため、プラス200円でイベントの特典が付いてくる仕組みとなっており、六本木ヒルズのインフラを最大限活用している。
また、サマパスには含まれない有料のアトラクションや展示ブースも作った。本社2階にあるお化け屋敷『喬子の哭く家』は入場料一般1000円。本物の役者が演じるお化けと、テレビ局の美術スタッフが制作したセットで、「腰を抜かすほど本当に怖い仕上がり」(赤津氏)。これら有料化施策で今夏イベントでは黒字化を目指している。
顧客満足度の高いアトラクションで宣伝
集客規模は、2014年のフジが44日間で約455万人、テレ朝が37日間で445万人。顧客満足度の高いアトラクションで宣伝、ブランディングができるテレビ局の夏イベントは、商品を宣伝したい企業からしても願ってもない機会だ。渋谷などの商業施設の前でイベントをやる場合、まず1カ月間で400万~500万人規模の集客は不可能なうえ、通行人相手のプロモーションとなる。
テレビ局夏イベントでのブース展示費用が5000万~1億円弱程度、同様の展示ブース等を設置して街中でのプロモーションを1カ月展開する場合の費用は1億円程度かかるようだ。「費用対効果が高い」(広告代理店社員)から、広告主はこぞって協賛に名乗りを上げる。だからこそ、フジは協賛金だけで15億円程度が集まるし、規模が小さいTBSデリシャカスでも、飲料メーカーが商品プロモーションの場として、昨年末の時点で今年の夏イベントのスポンサードを決定している。イベントの協賛を付加価値として番組の新規スポンサーを獲得、スポット広告の新規出稿を促すなど、テレビ広告の営業ツールとしても重要な役割を担っている。
加えて今年から、フジテレビ、テレビ朝日、日本テレビ各局は口をそろえて「2020年の東京オリンピック開催を視野に入れた展開」と話す。フジテレビは放送番組を知らなくても楽しめる、常設アミューズメント並みのアトラクションを投入。テレビ朝日はドラえもん、日本テレビはエヴァンゲリオンなど海外にも通用するコンテンツ活用で、これまでの主なターゲットだったファミリー層から客層を広げようとしている。若年層のテレビ離れが進み総世帯視聴率も低下するなか、テレビ局がリアルな場で直接顧客とコミュニケーションを持ち視聴者の反応を知ることができる夏イベントは、直接的な収益以上の大きな効果を生む可能性を秘めている。
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